発電所はあるのに稼働していないワケ
電力不足について、エネルギーアナリストの大場紀章氏は、発電所の稼働状況の問題をあげる。
「今現在、“動いていない”発電所はかなりたくさんあります。実は6月にこれほど暑くなるということを想定しておらず、暑い8月に向けて稼働する発電所がたくさんあった。想定していなかったために間に合わなかったということです」
大場氏によると、日本の電力システムは、“10年に一度の猛暑”に対応できるように設計されているという。
「6月に10年に一度以上のことが起きた。設計された想定をそもそも超えている。停まっていた発電所を稼働させることで緩和していくとは思いますが、立ち上げた発電所をフル稼働させても、もし8月に再度10年に一度以上の猛暑となったら、もう手段がない」(大場氏、以下同)
さらに天候以外の日本の問題点も指摘する。
「現在、日本の多くの火力発電所が閉鎖したり、休止状態になっているんです」
電力不足になるような国でなぜ発電所を閉鎖するのか。遠因は、近年叫ばれている『再生可能エネルギー』(自然界によって人が使う以上の早さで補完されるエネルギー。例=太陽光、風力など)にある。
「再エネが増えたことにより、ほかのエネルギーの電力市場の価格と電気料金が下がり、売り上げが落ちます。結果的に稼働率も下がる。そして採算が取れなくなる。そのため、いちばん採算が悪い発電所から廃止にしていく。コスパの悪い火力発電所を停めて、毎年多数の石油火力発電所が休止・廃止となっています。昔はこのようなことは起きなかった」
ではなぜ今、このような状況に至っているのか。この理由も自由化にあるという。
「電力会社は停電にならないように、多少コストがかかっても、保険のために火力発電所をつぶさずに残してきました。それが自由化によって“コスト”の考え方に変わった。使わない設備というのはコストです。普段あまり使わない、緊急時にしか使わない設備はできるだけ削減するという考え方になったのです」