経済合理性のため“保険”がなくなった。
「合理化のために緊急用の発電所がコストになり、それを廃止していった結果、余裕がどんどんなくなった。電力の安定供給のための仕組みとして新たな制度ができましたが、これが始まるのは'24年から。火力発電所をなくしていったら、'24年までの間、電力が不足するおそれがあることはわかっていたのです。その対策をするためにはお金がかかり、それは誰が出すのか。また、“たぶん大丈夫”という希望的観測を持っていたため対策が取られなかった。その結果が今です」
稼働には賛否があるが原子力発電は……。
「今、規制委員会の審査に合格したものが16基あり、そのうち再稼働実績があるのが10基、未稼働だが地元の合意が取れているのが2基ほど。しかし、実際に稼働しているのは4基。なぜ動いてないのかというと、再稼働から5年以内にテロ対策の設備をつくらないと稼働を停止とするルールがあるから。この設備の建設が間に合わなかったため発電を停止しているところがたくさんある。テロ対策設備の建設はコロナ禍で遅れてしまった面もあります」
“ヤバい”のは今年の夏なのか。それ以降は……。
「冬に立ち上げる予定だった発電所を前倒しで稼働させることで、夏はギリギリ乗り切れるのかなと考えます。しかし、実をいうと冬のほうが苦しい。冬にかけてさらに停まる発電所が結構あるからです。昔は8月が電力需要のピークだったんですが、今は冬の需要が大きくなっている」
夏は太陽光発電で助かっている部分があるが、冬になれば当然、日照時間は減る。
「夏を乗り切ったからといって安心できない。むしろ電力不足は冬が本番と考えます。火力発電所はどんどん減っている状況なので、来年はもっと苦しくなるかもしれません」
国民に節電を求めるだけか。政府や独占電力会社のやるべきことは……。