結婚前に、ほかの女性がいないかを確認した志穂さん。彼は「いない」と答えたという。その言葉を信じて、念願のウエディングドレスを着てバージンロードを歩いたのだ。その1年後に妊娠。授かったのは、夫に似た可愛い女の子だった。思えば、このときが幸せの絶頂期だったのかもしれない。予期せぬ出来事が生じたのは、7年目の結婚記念日のことだった。
「結婚記念日の夜、私と娘と3人でレストランで食事をすることになりました。夫は多忙ですが、記念日を大事にします。誕生日やクリスマスも家族で一緒に祝っていました」
パート先のオーガニックショップを早退。予約したエステサロンに向かっている途中、知らない番号から電話がかかってきた。普段ならスルーする志穂さんだったが、その日は朝からウキウキしていた。そんな気持ちのせいかもしれない、電話に出ると知らない女性の声が飛び込んできた。
夫の子どもを妊娠している、と言う女性
「私の名前を確認してから、女性は夫の子どもを妊娠しているから、さっさと離婚しなさいと言い放ちました。絶句しましたが、すぐに気を取り直して“いたずら電話はやめてください”と電話を切ったんです」
深呼吸をしてから、志穂さんは歩き出した。だが次第に不安が募ってきたため、幼なじみにLINEをした。すぐに「いたずらよ」と返信があったので、ほっとして再びエステサロンに向かったが、心のどこかで引っかかるものがあったという。
「出産前に銀行を退職して、育児に専念しました。子どもの手がかからなくなってきたので、パートで働きながら大学の通信コースで勉強し始めたのもこのころです。この後も、夫の子どもを妊娠したという女性から毎日のように電話がかかってきて“出ていけ!”と怒鳴られることが続きました」
夫とは長い付き合いだから別れられない、と電話の女性を引き下がらせようとした志穂さん。ところが夫より3歳年上だという相手の女性は、毎日何度も電話をかけてきた。
「夫に浮気をしたのかと問いただすと、あっさりと認めました。ショックでした。しかも“あれは頭がおかしいんだ”と忌々しそうに言い、“誰の子どもかわからないから、相手にしない”と無責任なことも口にするんです。そこで私への電話をやめるように伝えてくれと頼みました。
すると夫は“電話番号を変えてくれ”と言うだけ。“番号を変えても、きっとまたかけてくる。だからどうにかして”と訴えたのですが、夫は苦笑いをするだけでした」