ボランティア活動が元気とパワーの源に!

「好きなことをしているだけなので“稼いで”いる意識はないの。生徒さんたちからは元気や使命感、生きがいをもらっています。人を育てることで私の人生はその分、豊かになりました。人との縁が私の一番の財産ね。受講料の10%をいただいていますが、指導をしてくれる講師の先生へのお支払いや、ボランティア活動の出費もあって、儲けはあまり気にしていません」

 鈴木さんのライフワークであるボランティア活動は高校生のころ、日本赤十字社のJRC(青年赤十字奉仕団)に参加したことが発端だ。昨年の東京パラリンピックの際も“バリアフリー着物”を着付けるボランティアを行った。

パラリンピックのときの写真。車いすでも着られる「ファスナー着物」を着付けた
パラリンピックのときの写真。車いすでも着られる「ファスナー着物」を着付けた
【写真】東京パラ五輪で“バリアフリー着物”を車椅子利用者に着付ける鈴木さん

「最近では高齢者施設や学校などに伺います。先日、デイホームに行ってみなさんに着物を着付けてさしあげたら、認知症で無表情だった方が笑顔になり、背筋がピンとなってね。私たちの子どものころは振り袖なんて着られなかったので振り袖は人気があります。最初は『俺は着ない』なんて言っていた男性も着付けをしたあとははしゃいでいましたよ」

 着物のよさを広めるための見返りを求めない活動が口コミで広まり、結果、生徒を引き寄せている。これが鈴木さん流の「お金の引き寄せ方」だ。

鈴木富佐江さん
鈴木富佐江さん

「車いすでも着られる『ファスナー着物』も発案していて、おしゃれをしたいお嬢さんたちに喜ばれています。これからも帯で結ばれた人との縁を大切にしたいですね。まだまだ働きますよ」

 人生100年時代、知恵を働かせれば何歳でも積極的な生き方ができると話す。

「今は父方と母方、両方のルーツである阿波(徳島県)の古代史について研究をしていて、本の出版が決まったところ。何歳になっても自分から動けば新しい発見があって、楽しいですね」

◎鈴木さんのお守りアイテム

■ゲランの口紅

母愛用のゲランのミラー付きリップをいつも持ち歩いているという鈴木さん
母愛用のゲランのミラー付きリップをいつも持ち歩いているという鈴木さん

 身だしなみが大事だと教えてくれた、母愛用のゲランのミラー付きリップ ルージュはいつも持ち歩いている。「唇に塗った後は手のひらにとり、頬に薄くのばすと顔色もよく見えます」

お話を伺ったのは……

鈴木富佐江さん
「さくら着物工房」主宰。考案した盲学校の教材で朝日新聞社「明るい社会賞」、造り帯で婦人発明家協会「なるほど展」東京都知事賞を受賞。着物文化の伝承に務める。趣味は俳句。

取材・文/後藤るつ子、松澤ゆかり 撮影/齋藤周造 協力/熊谷和海