卵を選ぶ際にはもうひとつ注意点があるという。
「卵にはサルモネラ菌が潜んでいる危険性がありますが、たとえサルモネラ菌を保有していても産卵直後から10度以下で保管し続けていれば60日間は食中毒が起きるレベルまでには増殖しません。
しかし、一般的なスーパーの販売温度である25度で保管すると21日間、36度で保管するとたった1日で食中毒レベルにまで菌が増殖してしまいます。
卵は産卵後すぐにチルド管理されることが理想ですが、消費者にはそのあたりの事情はわかりません。そのため、店頭では常温ではなく冷蔵販売されている卵を選ぶといいでしょう。
また、高級卵と認識しがちな黄身が赤めのものも、単純に“与えている餌”に着色しているだけ。栄養成分は色味の濃さと関係ありません」(河岸さん)
安全な卵を安心して食すために、私たち消費者にできることはあるのだろうか。
「豊かで便利な社会の裏側で犠牲になっているものに対して、現代の消費者はあまりにも無関心すぎるといえるでしょう。
安さの裏にある実情にも意識を向け、1個の卵のありがたみを感じられる消費者でありたいものです」(細川先生)
河岸宏和さん●食品安全教育研究所代表。帯広畜産大学卒業後、大手のハムや卵メーカー、スーパー、コンビニエンスストアなどさまざまな食の現場で食品の製造・開発、品質管理、厨房衛生管理の仕事に携わる。『スーパーの裏側』など著書多数。
細川幸一先生●日本女子大学教授。独立行政法人国民生活センター調査室長補佐、アメリカ・ワイオミング州立大学ロースクール客員研究員等を経て、日本女子大学家政学部教授。内閣府消費者委員会委員や東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。専門は消費者法、消費者教育。
(取材・文/熊谷あづさ)