登場人物が“薄っぺら”で共感や感情移入が難しい
しかしネットの普及で誰もが簡単に情報へアクセスできるようになったこと、また視聴者の目も肥え、週単位でドラマ撮影があり、ゲスト出演者のスケジュール事情もわかっている。それに加え、個人の感想を言える場がネット上にあり、同じ意見の人が多くなれば書き込みも活発になる。
でも物語がつまらないと、原因の追求が始まり、物語を進めるために都合よくキャラクターを動かしていることなどが指摘され、意見がマイナスへ傾く……それが“倉庫”という、作劇の穴を揶揄する概念が生まれた理由ではないかと成田さんは考えているという。
「中でも『ちむどんどん』の登場人物は設定が全体的にやや薄っぺらなところがあり、なぜその考えや行動に至ったかの背景や過程がしっかり描かれずに突発的に出来事が起きるので、共感や感情移入が難しいんです。
今作で倉庫入りした人は、比嘉家の子どもたちをいじめていた金持ちの息子・島袋と眞境名商事の息子・秀樹、料理対決をしたヤング大会の対戦相手高の生徒、高校卒業後にブラジルへ渡った陸上部のキャプテン、比嘉家長男の賢秀に破壊された名護のハンバーガーショップと店主、賢秀が所属し寸借詐欺をしたボクシングジム、比嘉家長女・良子に思いを寄せ婚約寸前までいった金吾とその家族、良子の結婚相手・博夫の実家のおじいやおばあ、良子の同僚教師と担当児童、鶴見のおでん屋台と女将、家族の思い出の味ポルチーニのリゾットを比嘉家次女・暢子が働くレストラン“アッラ・フォンターナ”へ食べに来た父と娘、沖縄で遺骨収集をしている嘉手苅、比嘉家三女・歌子の元勤務先の同僚……。
こうした人たちが週の初めに登場しては比嘉家4人きょうだいの前に立ちはだかり、金曜日までに問題を解決する、というパターンが毎週繰り返されています。普通、ドラマには視聴者の心に残る脇役が出てきて、それが“推しキャラ”となり、物語に出てこなくなっても『あの人、今頃どうしているんだろうな』と懐かしく思い出すものなんですが……『ちむどんどん』にはそれが全然ないんです」
テレビウォッチャーの神無月ららさんは「悪役はほぼ全員取って出し、出たらすぐに倉庫アイテムと化す」と語る。
「さらに暢子たちの味方も倉庫へ行きがちで、暢子の幼馴染の早苗はその典型。高校時代こそいつも隣にいましたが、暢子上京後は最初の道案内をしただけで倉庫入り。暢子の結婚式で久々に登場した時は“いた! 良かった!”と安堵しました(笑)。早苗と励まし合って東京生活を送るシーンがあれば、暢子のキャラクターにもっと奥行きが生まれるのに、便利使いされるだけでもったいないですよね。
結婚式と言えば、沖縄時代からずっと比嘉家にお金を貸してきた石丸謙二郎さん演じる大叔父の賢吉がいなかったことにも驚きました。あんなにお世話になった人を結婚式に呼ばないなんてありえんし、借金問題がウヤムヤのまま倉庫行きは悲しい……大叔父さんこそ、アッラ・フォンターナの料理で労うべきでした」(神無月さん)