ワクチン“懐疑派”医師も論文に疑義
ASKAは研究結果という“データ”を声高に叫んでいる。このような“事実”はあるのだろうか。新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦氏に話を聞いた。
1つ断りを入れると、岡田医師は新型コロナのワクチンに対して懐疑的・否定的なスタンスだ。つまり、新型コロナワクチンについて、立場をざっくり大雑把に2つに分けるとすれば、ワクチンを否定し続けているASKAと同じスタンスといえる。
新型コロナについて、ワクチンよりも自然免疫の方が効果があるのか。『自然免疫』といっても、“コロナ感染によって出来た免疫”なのか、“人間が体内でもともと持ち合わせている免疫”があるが、ASKAはこれまでワクチン接種に異を唱えてきたため、前者の感染によって生まれた免疫と考えられる。
「自然免疫が、実際に感染したあとに体内で作られるものという意味なら、そのとおりです。多くの論文でそのような研究発表がずいぶん前からあります。
自然免疫はコロナウイルスに対しさまざまな抗体を作ります。もう1度コロナウイルスが入ってきたときにウイルスのあちこちに中和抗体がつくので、ウイルスが分裂するのを抑え込む作用が強い。
一方、ワクチンはスパイクタンパクに対する抗体しかないので、その分、若干効力が落ちるということはこれまでも言われてきていますし、理論的にも正しく、この点はそのとおりです」(岡田医師、以下同)
しかし、この“理論”は、この後に大事な話が続く。コロナに対する自然免疫は、コロナ感染によって獲得されるものだ。
「自然免疫の方が再感染予防の効果が高いのは確かにそうなんですが、“だからワクチンがダメ”とは誰も言っていません。感染予防をするためにわざわざ感染するのは怖いですから。“その代わりにワクチンを接種しましょう”というわけです。
100%の予防効果はないけれども、しないよりはずっとマシ、感染してない人はワクチン以外に予防する手段はないので、ワクチンで予防しましょうというのが、CDCも含めて世界中の公的機関が言っていることです」
ASKAがタイトルにも掲げた「ワクチンよりも自然免疫の方が効果がある」は、ことさら珍しいことではなく、世界の共通認識。そしてそれはワクチン接種と“セット”で考えるべき話。
事実、CDCは8月の広報発表でワクチン摂取の重要性を《引き続き推進》、また、『COVID-19ワクチンに関する誤解と事実』という発表でも、《COVID-19のワクチンを接種することは、COVID-19に感染するよりも安全で確実な免疫の作り方です》としている。
つまり、“ワクチンよりも自然免疫の方が効果があることをCDCが認めた”とは言っていない。
しかし、ワクチン“自体”にはさまざまな意見がある。
「ただ、私自身はワクチンそのものに重大な疑義を持っている。副作用が非常に強いのですが、このことがメディアで正しく語られていないからです。ただ、“一般論”としては、ワクチンよりも感染によって体内で作られる自然免疫の方が効果があるというのは正しい」
では、もう1つASKAが主張する「ワクチン接種による血栓」はどうだろうか。
「原著論文を読んでみました。まず、血栓ではないんですね。“血栓”とは論文のどこにも書いていない。論文には顕微鏡で見た血液を撮影した写真が掲載されています。同じ人の血液をワクチン接種前と接種後で比較したものです。
健康だった赤血球が接種後はくっついてしまっているとしています。この状態を“連銭形成”といいます。連銭とは『銭形平次』が持っていたあれです。つまり、赤血球が積み上げた銭のように並ぶ状態。これが免疫異常などで起こることは昔から知られています」
しかし、こちらも疑義がある。
「論文を読むと非常にずさんなものでした。まず、血液の変化ですがそれが本当にワクチンによって生じたものかの証明がなされていない。例えば、血液というのは非常に微妙な条件で健康が保たれているものです。
血液を1滴取り出して試験管に入れたり、顕微鏡で見るためにガラスに乗せたりすると、とたんに温度変化やpH、つまり酸性・アルカリ性の数値が変わったり、表面の電気状態が変わったりして、細胞同士がくっついたり、破れたりします。
従って血液を観察する際は条件を厳密に調整しないと、人間の血液中で本当に起こった病的変化なのか、人工的な操作によって生まれたものかわからない。専門家は当然知っていることであり、本来論文では“こういう工夫をして人工的な操作による産物や変化を防いだ”ということを記述しなくてはなりません。
しかし、この論文にはそれがありませんでした。それが無い状態で“数例こんなの見つけました”みたいな論文です。私が論文を採否する編集委員ならただちに却下するような内容で信憑性に乏しい」