想定外のオプション料金も

 出版社が費用を出す商業出版とは違い、自費出版は出版社サイドにリスクがない。著者が払う出版費用から必要な経費分を引いた残りが収入になるので、損をする可能性は限りなくゼロに近いからだ。

 出版社は自費出版部門を抱えていたり、自費出版の専門出版社も数百あるといわれている。それだけに営業競争にも熱が入り、出版に興味を抱きそうな対象を探してブログやSNSをチェックしたり、エッセイや短編小説などを募集する各種コンテストを開催したりして網を張っているのだ。

シニア世代もSNSなどを駆使して発信している ※写真はイメージです
シニア世代もSNSなどを駆使して発信している ※写真はイメージです
【写真】シニア世代でなくても注意!自費出版で「気をつけるポイント」

 なかでも、比較的よく聞くのが「自分史を本にしませんか」という宣伝文句。確かにシニア世代にもなれば、誰しもがそれなりの人生経験を重ねている。自分の生きてきた記録をしっかりとした形にして残したいという気持ちを持つこともあるだろう。

「クリエイティブなのは大変結構なのですが、いくら手軽だからといって、先方に言われるがままに事を運ぶのはキケン。作りたい側と自費出版社との認識の差から、本の完成後にトラブルになってしまうことも多い」

自費出版でよくあるトラブル
自費出版でよくあるトラブル

 と行政書士であり「自分史活用アドバイザー」としても活動中の馬場敦さんは言う。

 馬場さんは終活のためにも役立つと自費出版にトライして、結局、大いに悔やむ結果になってしまったシニア層を数多く見てきた。

 思い入れが深ければ深いだけ、本の装丁や色み、仕上がりの紙質ひとつにしても、「理想のイメージと違う」と残念に思うことは少なくない。もっといいものにしたいと文章のプロに、テコ入れしてもらった結果、自分らしさがまるでなくなってしまい家族にも見せられないものになってしまうことさえある。