荻原さんは「投資は最後の手段」と話す。

「最初にやるべきは、家計の見直し・資産の確認です。月の生活費、貯金、借金やローン、投資金額などをすべて紙に書き出してみましょう」

資産を確認し、家計を見直すことからはじめよう(写真はイメージです)
資産を確認し、家計を見直すことからはじめよう(写真はイメージです)
【写真】物価高・収入減に打ち勝つ方法とは……

 ひと目で全体が見えるように、1枚の紙に書き出すといい。眺めていると「投資金額が多いけど現金が少ない。少し解約して現金に回そう」「住宅ローンが67歳まであるけど、年金をもらいながら払うのは無理。早めに繰り上げ返済しよう」などの方針が見えてくる。

「方向性が定まったらあとは行動あるのみ。現金を増やすために妻がパートに出る、長く働くなどの選択が必要かも。こうして現金をしっかり確保し、投資はその後。投資は増える可能性もあるけどその逆もある。余剰資金があればやってもいい……と考えてください

老後に2000万円、今は1500万円

 ではどのくらい現金を用意しておけばいいのか。やはり老後は2000万円が必要なのか。

「それはコロナ禍前の話。今は必要ないでしょうね」

“老後2000万円問題”は金融庁が、高齢夫婦無職世帯の平均収入に対して支出が上回り、月5万5000円の赤字になると報告したのがきっけで広まった。老後30年で約2000万円が不足する計算だ。けれどコロナ禍となり、多くの家庭が外出やレジャーを控えたことで支出が減少。家計がコンパクトになり、赤字から約1万円のプラスに転じたのだ。

「2000万円というのは生活費の不足額なので、丸ごと不要になったのです」

制度をしっかり使いこなせば、医療費はかなり抑えられることも(写真はイメージです)
制度をしっかり使いこなせば、医療費はかなり抑えられることも(写真はイメージです)

 とはいえ、備えておきたいのは、介護費と医療費。介護費用は、生命保険文化センターによると平均1人600万円かかるので、夫婦で1200万円は用意しておきたい。また医療費は夫婦で200万円あればいいという。

「医療費が少ないように感じますが、日本は医療費制度が充実しているので意外とかからない。がんや脳梗塞で入院しても昨今はそれほど長くかからずに退院することが多いし、高額療養費制度を使えば負担額はさほど大きくないんです。

 介護費と医療費、お墓代などを含めて、夫婦で1500万円くらい現金を貯めておけば安心ですね