「彼はチャールズ・チャップリンが憧れで、喜劇役者を目指していたのよ。ある日なんかはね、洋食屋さんに行ったらフォークとナイフが出たわけ。お箸の時代よ。私、そんなもの使ったことないから、緊張しちゃって。
頼んだエビフライをドキドキしながら切ってたら、手が滑ってエビを床に落としちゃったの!あ~って絶望してたら彼が“イキのいいエビだね”って言ってくれたのよ。面白いし、チョットカッコいいでしょ?」
『ハーイあっこです』誕生秘話!?
“元祖ドジっ子”のチッチのようなみつはしさん。しかし、チッチの恋と同様に、この初恋が実ることはなかった。結局、父親の仕事を継いだスルメ君と疎遠になったまま、スルメ君は40歳の若さで亡くなってしまう。
「うまくいかないから片思い。でも、その思い出だけで元気になれる。私は後ろ向きに生きているのよ。楽しかったことは、何回も何回も思い出していいでしょ?」
こんなこと言うと、“前向きに生きなさい”って怒られそうだけどね、と笑う。後ろ向きに思い出を振り返り、60年漫画を描き続けてきたみつはしさん。60年間で楽しかったことは?
「朝日新聞の日曜版で連載した『ハーイあっこです』のときも笑ったわよ。あの連載、ホントは依頼の時点で一度断っていたの。無理だって。
そしたら“どうしても会って話がしたい”って言うから、本社へ行ったの。どうせアタマの固そうなオジサンが出てくるんだろうと思ったら、想像と違ってほっそりしたイケメンが出てきたのよ~」
そのうえイケメンは聞き上手。いつの間にかみつはしさんは家族の面白い話を披露しており、彼は大笑い。
「“じゃあ、みつはしさんの家族をモデルにした漫画にしましょう”ってまとめられちゃったのよ」