やさしい笑いに合わせる狙いも

 アンケートで最も賛否が分かれたのが、いわゆる「痛みを伴う笑い」に関するコメントだ。ビンタやキックなどの過激なツッコミ、容姿などのイジりネタ、芸人が身体を張ったドッキリ企画などに対して「暴力やいじめを助長することになりかねない。子どもに悪影響を及ぼさないか心配」(京都府・41歳・女性)、「見ていてただ不快なだけ」(青森県・34歳・男性)といった声が集まった。

 一方で「ちゃんとお笑い番組だとわかったうえでなら、過激な表現が多少あってもいい」(東京都・64歳・男性)、「少しくらい過激なほうがおもしろい。今のバラエティーはマイルドすぎてつまらない」(沖縄県・57歳・女性)といった擁護の声も。

最近はバラエティー番組の作り方もだいぶ変わってきました。罰ゲームなどでも、電流やハリセンを使った身体的に痛いものではなく、苦いお茶を飲まされるとか、ワサビ入りの“ロシアンたこ焼き”みたいなものが増えましたね。

 また、芸人さんの毒舌ネタや過激なネタの直後には笑顔のカットを必ず入れて“ちゃんと楽しい雰囲気ですよ”というわかりやすい演出も意図的に行われています。

 もちろんコンプラに配慮している側面もありますが、それより“やさしい笑い”を好むようになっている若い世代の視聴者を意識しているという点も大きいです」(前出・木村さん、以下同)

 とはいえ、撮影の現場では事故も多発している。最近では、タレントの松本伊代(57)がバラエティー番組『オオカミ少年』(TBS系)の“落とし穴”企画で腰椎を圧迫骨折する事故が起こっているほか、今年3月にはお笑いコンビ・ロッチの中岡創一(45)が、バラエティー番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)のロケ中に右足関節外踝を骨折。

 ドラマの現場では、今年10月に芸人のゆりやんレトリィバァ(32)がNetflixの『極悪女王』の撮影中に背中と頭を打ち、緊急入院する事態となった。

今年1年、骨折など撮影中の事故が連続して起こり、番組への批判も続出。出演者の安全面の対策は、番組制作の喫緊の課題だ
今年1年、骨折など撮影中の事故が連続して起こり、番組への批判も続出。出演者の安全面の対策は、番組制作の喫緊の課題だ
【グラフ】今のコンプライアンスの状況に「賛成? 反対?」アンケートを実施

「こういった事故が続いてしまうと、やはりテレビのコンプラはどうなっているんだという批判が起こり、規制が一層厳しくなる原因にもなってしまいます。一方で、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)のような、時には“やりすぎ”ともいわれるような番組に根強い人気があることも事実。

 スタッフがどんなに細心の注意を払っていても、不慮の事故というのは起こりうるものなので、単にコンプライアンスの話だけで片づけてしまうには難しい問題ですね」