澤井「PKですら緊張しないのに意外ですね」

丸山「そうなんですよ。なんでテレビの仕事だと緊張するのか考えたことがあるんです。自分なりに解釈したのが、バラエティやテレビの仕事って『自分がいかに爪痕残せたか』『誰かにハマることが出来たか』が分かりづらいからじゃないかと。

 これがサッカーの試合だったら、点取れば明確に良い仕事をしたと思われる。バラエティとかひな壇の仕事は手応えを感じづらいですし、いつも収録後はマネージャーさんに大丈夫だったかどうか確認しています」

サッカー選手引退後でいちばん楽しい時間

澤井「確かに正解がないですよね、それでいうと、さんまさんが拾ってくれたり、場を回してくれるのはかなりやりやすいですよね」

丸山「ほんとにいつも芸人さんやMCの方にサポートしてもらってばかりです。実際にテレビの仕事をしていく中で、番組を盛り上げていくのにはチームプレーが必要なんだなと。サッカーと同じですね」

澤井「本当にそうですよね。会話の掛け合いとかテンポとか大事ですし。大阪の劇場に行くと、芸人さんたちがネタを披露した後に、全員集まってフリートークする時間があるんですよ。その時はもうパスの応酬というか、『場を繋ぐ人』『ボケる人』『最後にオとす人』みたいな感じで、役割分担をしたうえで全員でボケまくるんですよ。それで最後に決める人がきっちり締めて終わりみたいな。綺麗な流れが大阪の文化としてできているんですよね」

丸山「演者さんだけでなくて、裏方の人たちもすごいですよね。テレビって1つの番組に何十人何百人も人数をかけててすごいなと。この笑う瞬間にどれだけの労力をかけているんだろうと思いますね」

澤井「僕も『細かすぎるモノマネ選手権』のオーディションをやっているんですけど、若手の芸人さんとかは、何回も来てくださるんですよ。そこでディレクターさんと一緒にネタを見て、ブラッシュアップをお願いして……というのを何回も繰り返す。でも本番はたった1分。そのためにかける情熱というか、一球入魂な感じはありますね

丸山「私はよくドッキリにかけられるんですけど、落とし穴はまさに一球入魂ですよね。一度、落とし穴のドッキリで、階段の途中に穴があるんですけど、なんか私の体幹が強すぎたのか全然落ちなくて(笑)。それで何回か撮り直してようやく落ちた後、穴から出てきたら周りのスタッフさんの量が尋常じゃなくて。

 落ちたことよりもスタッフの量にびっくりしましたね。驚きを通り越して、感動というか、新鮮というか。顔も汚れていたんですけど、むしろ清々しいような不思議な気持ちでした

澤井「まさか落とし穴に引っかかって感動する人がいるなんて(笑)」

丸山「やっぱ人を笑わせることってそれだけ大変で、大切なことなんだなと実感しました。やっぱバラエティで笑うことで救われている方もたくさんいるでしょうし、私自身は演者ですけど、その仕事に携われてよかったなと感じています」

澤井「じゃあ今後もテレビやバラエティのお仕事を続けていく予定ですか?」

丸山「はい! バラエティーは本当に魅力的な仕事ですし、芸人さんと一緒に仕事しているときが、サッカー選手引退後で一番楽しい時間かもしれないです。これからも同じようなバラエティーの仕事を続けて行けたらいいですね」

澤井「バラエティ番組に関わっている作家としてめちゃくちゃ嬉しいです! ぜひ機会があれば番組でご一緒したいですね。本日はありがとうございました!」

丸山「ありがとうございました!」

丸山桂里奈(まるやま かりな)
東京都大田区出身。日本体育大学体育学部体育学科卒業。元サッカー日本女子代表として2011年W杯優勝、2012年ロンドン五輪準優勝。引退後はタレントとしてバラエティ番組等に出演。夫は元日本代表の本並健治。

澤井直人(さわい なおと)
テレビ、YouTube、広告などの放送作家として活動。2022年より対談作家の道へ。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ(フジテレビ)』、『タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって!(テレビ東京)』、『NEOべしゃり博(フジテレビ)』、『爆笑ヒットパレード(フジテレビ)』などを担当。

https://twitter.com/onaona525(Twitter)
https://www.instagram.com/gui_nao1990/(Instagram)


構成・文/佐藤隼秀  撮影/山田智絵