「値段が高くてホテルが取れない」という状況もあるが、「高い値段を払ってもホテルが取れない(ない)」という“ホテル難民”が出ているという。
「この2年、都内から地方にという移動は多少ありましたが、地方から東京はコロナでかなり止まっていました。それが今、完全に動き出した。旅行以外にもイベントや、商談などの目的による東京での宿泊が増えています」
客室が埋まっていれば値段は下げない
高騰の背景にはもちろん、『全国旅行支援』もある。宿泊代金・旅行代金の40%相当が割引され、宿泊のみの場合は1人1泊あたり5,000円、交通つきの宿泊であれば1人1泊あたり8000円が上限の割引となるのが、全国旅行支援。
「全国旅行支援は、国が“もう出かけていいですよ”というお墨付きを与えたようなものです。割引がもちろん大きな理由ですが、このお墨付きを与えられたことで、旅行へのハードルが下がり、東京を中心に旅行者が回復したといえます」
ホテルが足りていない理由はまだある。
「今回、旅行者の数はすごく“急回復”だった。特に10月からですね。ホテル側はその急回復についていけていない。つまり、スタッフを集められていないのです。それほど儲かっておらず、高い給料を出せるわけではないので、余計に人集めが難しいのでしょう」
旅行支援の割引に付いて回る“便乗値上げ”。“市場の原理”として仕方ないという意見もある。
「今回の高騰は需給バランスとはいえ、以前の価格に比べると現在はやはり高すぎます。もっと早いうちに旅行支援をしていれば、ここまでホテルは減らなかったかもしれない、もう少し価格は抑えられていたかもしれないと思います。ホテルの数があれば、それなりに値段は下がるわけですから。
あまりに市場の原理による高騰が起こりすぎてしまうと、出かけたくなくなってしまったり、“だったら行くのやめよう”、“日帰りにしよう”という思考になりかねない。たとえばビジネスホテルでしたら、その“あり方”としてやはり上限というものは考えなきゃいけないとは思います」
1月に全国旅行支援は割引が40%から20%に引き下げられる。
「旅行支援を使うメリットがそこまで大きくない状況になったとき、それでもホテル宿泊料金の水準が高い状況が続くのであれば、今後下がる要素がないといえます」
ホテル側からすれば、「高い値段だけど、客室は埋まってますから。だから下げません」という意見になるだろう。状況に応じた変動性のある価格設定は『ダイナミックプライシング』と呼ばれる。