歯の汚れの4割が取り除けていない
ただ、日本人が歯のケアにまったく無頓着というわけではない。実際に、日本人に歯磨きの回数を調査した厚生労働省のデータによれば、1日に2回行う人が49.8%、3回行う人が27.3%だった。回数だけでみれば、十分意識が高いようにみえる。
それでも口臭を指摘される原因は、根本的なケアの仕方を間違えているからだ。
「歯磨きを何のために行いますか、という質問には、大半の人が『歯についた食べかすを取るため』と答えます。実はこれが大間違い。歯磨きの本当の目的は、歯垢(プラーク)を取り除くことです」
歯の表面にまとわりつく、白くねばついたものが歯垢だ。これは細菌の固まりになっているため、取り除かなければ口内環境を悪化させ、悪臭の原因になる。
歯垢が残りやすいのが、歯と歯茎の境目、歯と歯の間や奥歯などのブラシが届きづらい箇所だ。
「多くの患者さんが肝心な部分を磨けていません。研究結果によれば、歯ブラシだけで取り除ける歯垢はせいぜい6割ほど。残り4割の汚れが残り続けるようだと歯磨きの効果がないんです」
歯の隙間を磨く道具が「デンタルフロス」や「歯間ブラシ」と呼ばれるもの。実は海外では、これらは必ず歯ブラシとセットで使う認識が根づいている。
しかし、日本ではセット使いがまだまだ普及していないのが現状だ。
また、口腔内をすっきりさせるマウスウォッシュだが、使い方を間違えている人が非常に多いという。昼食のあと、口をゆすいでおけば大丈夫と考えてはいないだろうか。
「マウスウォッシュはブラッシング後のコーティング剤として使って、はじめて効果が得られるもの。歯磨きの代わりにはなりません」
日本人の口内環境が悪化しがちな原因としては、医療保険制度の事情も関係する。日本では、すべての国民がなんらかの医療保険に入ることを義務づけられているおかげで、一般的には3割の自己負担で歯科医院に行ける。
しかしその反面、ケアするという意識が薄れ、悪くなったら行けばいいと考えがちなのだ。