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ー 『大奥』話題になるも視聴率は伸び悩み?
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ー NHK『大奥』の狙いは中高年層 ー NHK『大奥』は完全ドラマ化を目指す

 男女が逆転した世界を描くNHKドラマ10『大奥』(火曜午後10時)の評判が高い。確かに出色の作品だ。

 ところが、15作品ある冬ドラマの中で視聴率はベストテンに入らない(2020年4月以降、テレビ界は世帯視聴率から個人視聴率に移行しているので、この記事でも個人視聴率を中心とする)。

『大奥』話題になるも視聴率は伸び悩み?

 どうして、このようなことが起こるのか? それを考察すると、現代のドラマと視聴率の関係が見えてくる。世帯視聴率が物差しだった平成期とは次元が全く異なっている。

 あらかじめ書いておくと、いつの時代もドラマの視聴率と質は関係ない。ただし、視聴率を知っておくのは悪いことではないはずだ。視聴率は世間の関心度のバロメーター。それを知った上で自分の好みの作品を選べばいいのではないか。「人気」と謳われている番組が本当にそうなのかどうかも判断できる。

 冬ドラマの視聴率上位の5作品は次の通り。個人視聴率は「4歳以上のうち何%が観ているか」を表し、世帯視聴率は「何%の家が観ていたか」を示す(2月20日~同27日、ビデオリサーチ調べ、関東地区)

(1)TBS系日曜劇場『Get Ready!』(日曜午後9時)個人5.7%(世帯9.1%)
(2)テレビ朝日系『警視庁アウトサイダー』(木曜午後9時)個人5.2%(世帯9.4%)
(3)フジテレビ系『罠の戦争』(月曜午後10時)個人4.8%(世帯8.3%)
(4)日本テレビ系『大病院占拠』(土曜午後10時)個人4.4%(世帯7.1%)
(5)TBS系『100万回 言えばよかった』(金曜午後10時)個人4.2%(世帯7.6%)

『大奥』は個人3.1%(世帯5.7%)で12位。同じ時間帯のTBS系『夕暮れに、手をつなぐ』3.4%(世帯5.9%)を下回った。

 もっとも、こんな結果はプロであるNHK制作者たちはお見通しだったに違いない。

 ここに記した個人視聴率は全体値だが、ほかに性別、年齢別の個人視聴率もある。『大奥』の性別、年齢別データを見てみると、男女ともに若い世代には敬遠されている。

 中でも男女10代、男女20歳から34歳の個人視聴率がかなり低い。コア視聴率(13~49歳の個人視聴率)は『夕暮れに、手をつなぐ』が2.7%なのに対し、『大奥』は1.5%である。

 根底にあるテーマが骨太で重厚なのが大きな理由だろう。軽くないからだ。この物語の前提には、若い男子のみ罹って、死に至らしめる架空の難病「赤面疱瘡」がある。

 それが基で男女が逆転し、観る側に現代にも通じる感染症問題やジェンダー問題、少子化問題などを考えさせる。映像は華やかだが、ヤワな作品ではない。観る側に一定の問題意識を要求する。

 このため、中高年男女の個人視聴率は高い。中高年はもともと全般的にドラマをよく観る上、社会問題にも関心を持っている人が多いからだろう。

 中でも『大奥』を最も観ているのは50代以上女性だ。冨永愛(40)が演じる8代将軍・徳川吉宗らの凜々しさに惹かれるのも一因ではないか。天海祐希(55)、大地真央(67)らを輩出した宝塚の男役スターのファンが多いのも中高年の女性である。