負債2000万円を抱えどん底を見た30代

 ファッションが好きで、高校卒業後は婦人服専門店に就職するために上京。その2年後、父親が余命半年だという便りが届き、地元である北九州に帰郷した。

 経験を買われ、新しいファッションビルでブティック出店の声がかかり、オーナーとしてお店を開いたのが25歳のときだった。

「最初はうまくいって、2店舗目も出店しました。ところが、近くに別のファッションビルがオープンしたことで、お客さまの流れが一気に変わり、お店は廃業に追い込まれました」

 なんと35歳で総額2000万円の負債を抱え、返済に追われる生活が始まったという。

「そのころは最低な人生だと思っていました。お給料を負債の返済に充てるとほとんど残らないし、いつになったら返し終えられるのかもわからない……。

 でも、今思えばこのときに安くて素敵なものを発見する目やプチプラでおしゃれをするコツが身に付いたんだと思います」

 どん底にいたロコリさんを奮い立たせたのが、自己啓発本だった。

「本屋さんに立ち読みをしに行ったり、図書館へ足を運んだり。一番よかったのは、知人が貸してくれたアメリカの女優・シャーリー・マクレーンの人生指南書。たくさんの勇気とパワーをもらって、自分を信じて前に進めば、きっと大丈夫だと思えました」

10年にも及んだ壊れゆく母の介護

 借金生活は20年ほど続き、なんとか返済。しかし、ロコリさんの苦労は終わらなかった。85歳の母親が認知症を発症したのだ。

「母は71歳でカラオケ講師になり、80代半ばまでカラオケ教室を続けていたくらい、アクティブで前向きな女性で私の憧れでした。もともとしっかりした母が認知症を患ってから、ゆっくりだけど徐々に変化していってすごく怖かった。

 症状が進んでいくごとに私のイライラ感も高まって、強い言葉を投げつけたり、声を荒らげたりして、自己嫌悪を繰り返す毎日でしたね」

 このときも不安に潰されないように努めたという。

「母とふたりで公園に行って、きれいな景色を見ながらおやつを食べるとお互いに優しくなれました。生活感のない空間に行くと毎日の苦しさから逃げられたんです」

 介護が10年を過ぎたころ、母親は病院で静かに息を引き取った。