父と姉を見送り、ひとり母の介護中
ヒロシさんは次第に足腰が弱くなり、夫婦2人の生活が困難になったため、特別養護老人ホームに1年間の待機期間を経て入所。昨年8月、眠るように亡くなった。
その後、乳がんで療養中だった姉のかおさんの容体が悪化。父の死のわずか3か月後、カータンさんは、介護の戦友だった姉のかおさんも失う。
「つい『ちょっと聞いてよ、ママがね……』と姉に電話しそうになって、もういないんだと再認識する寂しさといったら……。なのに、姉の死を理解できない母の能天気さが恨めしくもありました。
娘に先立たれるというつらさを感じないですむのは、幸せともいえます。でも昔の母なら愛する娘の手を握って励ましたり、涙が枯れるまで泣きたかったりしたかもしれない。認知症という病気の残酷さを思い、切なくなります」
今もカータンさんは実家に通い、母親の介護を続ける。
「先日テレビで、認知症の親への接し方をクイズ形式で紹介していて、私、全問正解できたんですよ。ケアマネさんにも伝えたら、『親御さんとしっかり向き合ってきたからですね』と言われて、涙が出そうになりました」
とはいえ、カータンさんは「親の面倒は子がみるべき」とは決して考えないという。
「だって、私だって若くはないですよ! 例えば、夏のリゾートに行きたくても、自分で動ける間に夏はあと何回あります? そう思うと、こんなことばかりしてはいられない、と考えるのもホンネ」
自分には自分の人生がある。24時間親に付き添えない。介護のプロの助けを借りて、自分がいないときに何か起こっても、そこは割り切る、と決めている。
「冷たいように思われるかもしれないけど」とカータンさんは前置きするが、そのほうがストレスをためず、親の心に寄り添う気持ちにもなれるのだろう。
「親の介護をしていると、人の一生を見せられているようで。だからこそ、自分の人生も大切にしなきゃと思うんです。そのためにはまず介護のプロを味方にせねば!親の様子がアヤシイと思ったら、迷わず地域包括支援センターに駆け込んでくださいね」
カータン流 介護の心得
●介護のダークなグチを吐き出せる場をつくる
●親の衰えではなく、「できること」に目を向ける
●「もし自分だったら」と親の気持ちになってみる
●介護のプロを味方につけ、自分の人生を大切に!
(取材・文/志賀桂子)