人間のみならずネコやイヌの死亡例も
では、万が一かまれてしまった場合はどうすれば?
「マダニは口器を突き刺し、長時間吸血します。吸血中のマダニに気がついた場合、無理に引き抜こうとするとマダニの口器が皮膚内に残ってしまうこともある。
ダニを除去する道具も売られていますが、できれば皮膚科で処置をしてもらったほうがきれいに取れると思います」
かまれた直後は無症状でも、SFTSの場合、潜伏期間が6日~2週間程度ある。発熱や倦怠(けんたい)感を覚えたら、すぐに受診するように。
「マダニは、SFTSのほかに『日本紅斑熱』や『ライム病』、『ダニ媒介性脳炎』を媒介するダニでもあります。体調が崩れたからといっても、SFTSとは限りません。
また、日本紅斑熱やライム病は細菌なので、抗生物質で治ります。受診した病院で、きちんと診断してもらうことが大切です」
一方、SFTSは、4類感染症に位置付けられるウイルスだ。
「有効な治療薬はありません。亡くなる方のほとんどは高齢者ですが、致死率は約30%といわれている」と早坂先生が話すように、油断できない感染症であることは間違いない。
「最近、アビガンという抗ウイルス薬が厚生労働省から希少疾病用医薬品として指定され、SFTSに効果がある医薬品として、現在、実用化に向けた開発が進んでいます」
近い将来、SFTSの脅威がなくなる可能性があるというのは朗報だが、「まだSFTSには懸念すべきことがある」と早坂先生は続ける。
「マダニは、野山や草むらに生息すると先述しましたが、ネコやイヌにもくっつきます。'17年には、SFTSを発症したネコとイヌが報告され、動物園で飼育されていたチーターもSFTSで死んでいたことがわかりました」