「オンライン上で保険資格がないと表示され、今日は診療費が10割負担となることを説明しました。ある患者さんはきちんと支払ってくれましたが、別の方には激怒されてしまい、納得していただくのに大変でした」
そう話すのは、埼玉県のMクリニックで受け付け業務を行っているAさん。マイナ保険証のトラブルは最近では珍しいことではない。
課題山積のマイナ保険証、診療にも悪影響が!
政府は、2024年秋には紙の保険証を廃止して、マイナ保険証を使うようにといっている。
このままでは、マイナ保険証をゴリ押しする政府の“犠牲者”が、全国にどんどん増えていくばかりだ。
今もっとも身近な“犠牲者”となっているのは病院・クリニックの現場である。
「今年3月にはまだ少なかったですが、4月に入ったら全国の医療機関からマイナ保険証のせいで混乱している、もう無理だという悲痛な声が上がり始めました」
こう語るのは、医師・歯科医師が保険医療と国民医療を守る活動を行う団体、全国保険医団体連合会※(保団連)の本並省吾さん。
※全国保険医団体連合会…1969年に結成。会員数は10万7000人超、全国47都道府県の51保険医協会・保険医会が加盟。医科・歯科の保険医の団体
この混乱を受け、保団連では4月末から5月初旬にかけて調査を実施。すると、不満の声が続々と寄せられた。
「健康保険証を持っている、つまり資格があるのに、50人に1~2人がオンライン上では無資格と出てしまう。“役所に確認が必要となって大変だ”“双子が同一人物と認識されてしまった”という事例も報告されています」
これでは患者は何の悪いジョークなのかとあきれたことだろう。
さらに、高齢の患者が多数来院すると、医院にも患者にも不幸なことになる。1人では認証操作ができず、毎回代行の必要が出てきて「スタッフがパンクしてしまった」という例も報告されている。
「ある病院では、ご高齢の方が『保険料を支払っているのに、なぜ保険証が使えないのか』と大騒ぎしたため、警察を呼ぶ騒動にまで発展したそうです。病院も患者さんも悪くないのですが……」(本並さん、以下同)
政府はマイナ保険証で「オンラインで保険の資格がすぐ確認できて受け付けが早くなる」「薬の過剰投与も防げる」などとアピールしてきた。
それが5月に入ると、「マイナ保険証に別人の情報を誤って登録」「医療費や薬などの個人情報を他の人が閲覧できた」といったトラブルを加藤勝信厚生労働大臣が続々と明らかにした。
既往歴や投薬の情報をオンラインで確認できたとしても、それが別人のものだとしたら、医療事故につながってしまう。
マイナ保険証の不備の多さに「早く国民のお金を管理したいだけなのか」「ずさんすぎる」と、ネット上でも大ブーイングが起こっている。
「国会がたった1度、保団連への参考人質疑を行っただけで、政府は紙の健康保険証廃止を決めてしまったんです」