自力で保険証が作れない高齢者は通院できない?
政府はマイナ保険証によって、高齢者の通院を阻止する意図はないが、実のところ「お年寄りが通院をためらう環境」を強いている。
保険料を支払っていても、無資格扱いの場合、通常1割負担の人も10割仮払いすることになる。つまり、1万円の診察料なら10万円。年金生活者が簡単に払える額ではない。
「頼れる家族のいないひとり暮らしの高齢者でも、自分でマイナ保険証を申請する必要があるのです。
従来のように申請しなくても保険証が届いていたものが、個人からの『申請ありき』に変わってしまった。自分で申請できない高齢者が、保険から取りこぼされる危険性があります」
マイナ保険証を高齢者が1人で申請できるのか。寝たきりの人は、顔写真の撮影も大変なのではないか。手続きのために、役所へ行けるのだろうか。
代理人が申請する場合には、本人が行けないという証明書と委任状も準備しなくてはいけないし、無事申請できても、パスワードや暗証番号を覚えていられるのか。不安要素ばかりなのだ。
「政府は介護施設や高齢者に対して、マイナ保険証の出張申請をすると言っています。しかし、特養ホームだけでも65万人、1万施設あります。窓口対応でさえ混乱している役所が、出張申請まで、はたして手が回るでしょうか」
マイナ保険証を作れない人のために、政府の救済策として、「資格確認書」を発行するという。しかし、有効期限はたった1年……。
政府は健康保険証だけでなく、介護保険証もマイナンバーと一体化する方針を示している。
つまり、このままだと、「マイナ保険証は利用が難しいし、資格確認書は1年で失効する。マイナ保険証の混乱で近所のクリニックも閉院し、遠方の病院に行くのは大変だ」……と、高齢者が通院しにくくなっていくばかり。
軽症時に治療をためらうことで、病院に着いたときには「亡くなっていた」という悲劇が起こらないことを願うのみである。
(取材・文/オフィス三銃士)