これからの展望は

'15年、東大病院の小児科外来で診察中のカット。この笑顔で子どもはもちろん、親までもが癒される
'15年、東大病院の小児科外来で診察中のカット。この笑顔で子どもはもちろん、親までもが癒される
【写真】来日したヨルダン国王夫妻の通訳も担当した伊藤さん。王妃の隣には当時の皇太子妃、雅子さまの姿も

 これからの自分にさらにプラスしたいものは何か? 最後に尋ねてみた。

「私はまだ小児科の中では異端なんですよ。子どもたちのメンタルに関しても、栄養素がものすごくかかわっているっていうことは臨床の中でもわかっていますし、先行研究でも実際そういう情報はあるんですが、すべての日本の小児科医が認めているわけではないんですね。ですから、それを自分の研究として論文にまとめて、信頼性のある科学的な情報として残したいと思っています」

 書籍の出版やネットでの発信も、多くの人に情報を届けられるが、より広く知ってもらうには、論文にして発表することが必要なのだという。

 ニコニコと笑顔を絶やさない伊藤さん。それは作り笑いではない一生もの。困難もしなやかに乗り越えてきた「レジリエンス」のなせる業だ。誰もが伊藤さんみたいなスーパーウーマンにはなれないが、彼女に近づけるヒントを教えてくれた。

<取材・文/森きわこ>

もり・きわこ フリーライター。東京都生まれ。人物取材、ドキュメンタリーを中心に各種メディアで執筆。13年間の専業主婦生活の後、コンサルティング会社などで働く。好きな言葉は「やり直しのきく人生」。