週3回、1回4時間以上かけて機械の力で血液を浄化する人工透析。透析を受けると強い疲労感が残り、人によってはその日はぐったりして何もできない状態になる。
ただし、透析は一度始めたら一生続けるしかない。やめると毒素が体内にたまり続けて死に至るので、中止は許されないのだ。
透析の原因の多くは糖尿病と高血圧
いま日本では約35万人が透析を受けていて、新たに始める人は1年間に約4万人。右肩上がりに増えている。当然、透析にかかる医療費も増大を続けていて保険制度を圧迫。
透析の経費だけで1人あたり年間500万円、35万人の総額で1兆7000億円もかかっている。
現在、透析を受ける原因の大半は、糖尿病と高血圧だ。血糖値や血圧が高い状態が続くと血管がダメージを受け、ごく細い血管が集まっている腎臓が損傷する。腎臓の機能が落ちると慢性腎臓病という病気になり、それが進行すると透析が必要になる。
腎臓はただでさえ加齢によって老化していく臓器。老化によって働きが悪くなることに加えて、高血糖や高血圧のダメージを受けると、透析のリスクが上がるのだ。
透析のリスクや老化の加速にも
そんな大切な腎臓の老化を早めてしまう物質があるという。
「腎臓は、食事で『リン』という物質をとりすぎることによって老化が加速することがわかっています」
と教えてくれたのは、自治医科大学抗加齢医学研究部の黒尾誠教授だ。
「リンはそもそも、カルシウムとともに骨を構成していたり、細胞膜の主な成分になっていたりと、私たちが身体を維持していくうえで必要不可欠な物質です。
肉や魚や乳製品など、さまざまな食品に含まれているため、ふつうの食生活を送っていれば、まず、不足することはありません」(黒尾教授、以下同)
不足するどころか、とりすぎの人が多いのだという。
「リンは食材に含まれているだけでなく、食品添加物として人工的に使われることがあります。その食品添加物のリンのとりすぎが大問題なのです」
リンは塩や砂糖と違って無味無臭のため、たとえ多く入っていても気がつかずに食べている。リンをとりすぎて腎臓の機能が低下すると、やがて慢性腎臓病になってしまう。
そのため、高血圧や高血糖の人がリンの過剰摂取を続けると、より透析のリスクが上がるというわけだ。
透析が必要にならないためにも、リンをとりすぎないようにしたいものだが、そう簡単ではないのだという。