それが、『リーガルハイ』シリーズのように、本来正義側という認識のあった弁護士が金に目がなく毒のある人物であったという設定や、徹底的に裏をかくことの連続を刺激的に見せた信用詐欺のドラマ『コンフィデンスマンJP』や、泥棒もののパロディーの極地『ルパンの娘』(2019年)など、既存のジャンルを逆手にとって喜劇あるいは戯画化したような作品を生み出し、人気を得た。
『ONE DAY』の脚本家は『ルパンの娘』の徳永友一であり、プロデューサーは『リーガル』『コンフィ』の成河広明である。さらに記せば、演出家は、三谷幸喜ドラマを多く手掛けてきた鈴木雅之である。
バラエティーの成功体験に固執している?
華やかな舞台を用意し、既存のハリウッド映画のようなメジャー作を意識して、オマージュしたり、あえて解体し再構築したり、構造の面白さ、展開の意外性の力技で視聴者を牽引していくバラエティー的な見せ方の成功体験に基づいて、『ONE DAY』はつくられたように思われる。
梶原善や佐藤浩市などのクセの強い脇役などがアクセントとして登場するのもフジテレビらしい賑やかしである。もっともサブタイトルの「から騒ぎ」とあるので、これらが「から騒ぎ」であることをわかってあえてやっている、むしろ「から騒ぎ」万歳なのだろう。ところがこういったバラエティー的な、よくいえばお遊び、悪くいえば悪ふざけを好む視聴者が思いの外、減ってしまっていたのが現状なのではないか。
最終的には、三谷幸喜的、ウェルメイドに落ち着くのであろうが、いまの視聴者はそこまで待つ余裕はないのである。『24』の場合、主人公とその家族と政治家の関連がわかっているから安心して見られたが、『ONE DAY』は接点のない人たちの接点がわかり、ウェルメイドなラストになるまで待ってはいられない。瞬間瞬間、どんどん謎を解いて先に進みたいのである。
こういう世相を読めなかったのか、わかっていたうえで遊びも忘れないでいたいと世に問うているのか。老舗の味・デミグラスソースに固執するシェフとフジテレビが重なって見えて、なんだか切なくなってきた。『東ラブ』もハマったし、『王様のレストラン』や『リーガル』『コンフィ』『ルパンの娘』等々、過去作が大好きだっただけによけいに。
木俣 冬(きまた ふゆ)Fuyu Kimata
コラムニスト
東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。