1人で会社を設立する場合、株式会社と合同会社があるが、前者は所有者=株主、運営者=経営陣を別々に設定する(切り離す)ことが可能。後者は、会社の所有者と運営者が原則同じとなる。
個人で会社をつくるメリットは
服部さんは、「複業的な稼ぎ方をしている個人事業主は、合同会社が望ましい」と続ける。所有者と運営者が同じである合同会社は、個人事業主とほぼ同じことをしているにもかかわらず、「法人格」を手に入れることで、社会的信用度が大幅に向上するという。
「わかりやすい例でいえば、銀行から融資を受けやすくなるなどのメリットがあります。また、社会的信用度が担保されているからこそ、個人事業主よりも受けることができる助成金や補助金の数が、圧倒的に多いことも法人の特徴です」
設立に際して、株式会社は約20万円、合同会社は6万円ほど費用がかかる。別途、収入印紙代(4万円)が発生するが、株式会社の半分程度で会社設立ができるのもメリットだろう。合同会社を設立するまでのプロセスだが、大きく分けて次のフローがあると説明する。
「1・会社の基本情報を決定する、2・法人用の実印を作成する、3・定款を作成する、4・出資金の払い込みを行う、5・本店所在地を管轄している法務局に登記申請書類一式を提出する─、この5つを覚えておいてください」
中でも、1の基本情報は、3の定款ともリンクするため注意が必要だ。
「定款に記載されていない事業を行うことはできないので、基本情報には将来的に行う予定の事業も含めて記載しておくのが一般的です。
ですが、設立したての会社の事業目的が多すぎると、実態がつかみづらくかえってマイナスなイメージを与えかねない。最後に、『前各号に付帯関連する一切の事業』と記載することで広い範囲をカバーできます」
ちなみに、資本金に下限はなく、法的には1円でも合同会社を設立できるが、3か月から半年は売り上げがなくても事業を続けられる金額に設定することが一般的だ。
「資本金は会社の体力であり信用度にも関わるので、取引先がある場合や金融機関に見られることを考慮して金額を決めるようにしましょう」
こうしたデスクワークを面倒だと感じる人は多いはず。しかし、法人格という分身をつくることで得られるメリットは、まだまだある。
「個人であれば赤字の繰越期間は3年ですが、法人の場合は10年に延長されます。つまり、繰り越した赤字を最長10年間、黒字が出たときに相殺することができます。事業がまだまだ不安定な人ほど、合同会社を作るメリットがあるのです」