タイミングを逃す前に今始めて後悔を防ぐ

 まず以下で紹介する項目を見てほしい。曽根さんへの取材をもとに、親との終活を急ぐべき人の例を挙げている。自身が当てはまるかどうか、チェックを。

こんな人は特に注意!
・遠方に住む親と疎遠である
・親がケガや介護で入院・入所している
・父母のどちらかが先立った
・親の介護の負担が親族のひとりに偏っている
・親がスマホで資産取引をしている

「親の介護の始まりは、終活に早く取りかかるべきサインといえるでしょう。介護施設や病院に入所・入院すると、気力や刺激を失って認知症を発症するケースが多いです。認知症の場合、本人との意思確認は困難を極めます。そうなる前に話し合いの機会を持つようにしたいですね」

 父母のどちらかが先立つのも認知症につながりやすいパターンのひとつ。

「配偶者の死によって同様に気力を失い、認知症を発症しやすいのです。あとを追うように亡くなるケースも少なくないため、親との終活を急がなければなりません」

 親の介護の負担の偏りも、のちのちトラブルの原因に。また、親がスマホで株取引している場合はどんな注意点が?

「今は高齢者でもスマホやパソコンを使って株などの金融商品を取引しています。親が該当し、ネット証券に株などの資産を残したまま亡くなったら、遺族は探し出すのに苦労を強いられ、資産の引き出しも容易ではありません。

 そこで、通常の終活に加えて、“デジタル終活”が必要になってくるのです」

まず親の人生を知って寄り添うことから

 では、親との終活は何から手をつければいいのか。3つのステップに分け、親の気持ちを知るためにやるべきことをまとめた。

先延ばしにせず、まずはココから!親の気持ちを知る3ステップ
《STEP1》頻繁に連絡を取り合う
親との連絡を密にして、薄れていた関係性の回復に努める。関係性を取り戻せば会話も弾んでいく。終活に向けた下地作りの位置づけ。

《STEP2》親子の年表を作る
親の歴史を子は知らないもの。これまでの歩みや思い出をインタビューし、自身の歩みも加えて親子年表を作ると、親の人生が見えてくる。

《STEP3》家族の未来年表を作る
家族の未来に起きることを想定し作成。今後どのタイミングでお金が必要になるか、また親の介護や看取りについて現実的に考える道標に。

 住まいが別々の親と連絡を取っていないなら、頻繁に連絡を取り合うようにするのが第一。自分から電話をかけたり、実家が近ければ夕食などに足を運ぶ。

「親が遠方に住んでいる場合は、より意識して電話やLINEなどで接点を持つようにしましょう。親との関係性を再構築し、終活に向けた下地作りを行います」そのうえで、「親子の年表」や「家族の未来年表」の作成に取り組む。

「『親子の年表』は親にインタビューしてまとめます。幼少期から現在までの歩みや思い出を聞きましょう。併せて自身のこれまでの歩みも思い返し、年表を完成させてください。

 次の『家族の未来年表』はその名のとおり、家族の未来を想定してまとめます。相続の発生、子の成長や独立などまで見通し、年表に落とし込んでください。

 2つの年表をみんなで共有すれば、親の気持ちに寄り添う終活のヒントを家族全員が得て、話し合いに臨めるのです」