インスタグラムで10万円以上する高級ブランドバッグが1万5000円で売っている広告を見たAさん。いくらなんでも安すぎると迷ったけれど、有名女優が宣伝していたので思い切って購入したが、届いたのはとんでもない粗悪品。

 被害は少額でも、口座情報の抜き取りも考えられる─。有名人が出ているからといって、広告をむやみに信じない、そして極端に安いものには手を出すな、これは鉄則だ。

ボーナスシーズンは詐欺被害件数も増える時期

 なぜ、50~60代がSNS詐欺に引っかかってしまうのか。村上弁護士は4つの背景があるという。

1つは、コロナ禍で、直接会ったことがない人とつながることに抵抗がなくなった。2つ目はネットショッピングや、キャッシュレス決済が増え、お金を使う緊張意識が薄れた。

  3つ目は若い人よりもLINEやポータルサイトの知識が浅く、注意がおろそかになる。4つ目は、退職金や親の遺産が手に入り、少しまとまった額を持っている年代であるということです

 世の中は物価高で生活が厳しくなっている。老後は2000万円が必要などといわれたこともあった。

「老後資金を少しでも増やしたいのは当然です。さらに、国は個人の資産運用を推進しており、世の中には、投資で成功した人の話があふれています。投資に対する警戒心やハードルが下がっているんですね。

 来年から導入される新NISA(少額投資非課税制度)の広告も非常に多く目にする昨今、それを釣りにして投資詐欺へと誘導する手口も非常に増えています」

 老後不安から、うまい話があるなら自分も乗っかりたいと思ってしまう気持ちが働く。しかし、投資詐欺被害で1000万円前後ものお金をだまし取られる被害が中高年層に非常に多い。

「ちょっとへそくりしていた50万円を……と思って、振り込むと右肩上がりに増えるので、気が大きくなって軍資金をどんどん増やしてしまうわけです。詐欺被害に遭っているにもかかわらず“詐欺に遭っていることを信じたくない”“しっかり取り戻したい”といった思いで、またお金を振り込んでしまう人もいます」

 詐欺師たちは常に手口をアップデートさせているということを肝に銘じておかなければならない。

「これからのボーナスシーズン、また年末年始を控えてお金の動きが活発になります。詐欺被害件数も増える時期ですから、巧妙な罠に引っかからないように注意を!」