乳がんなどには使わざるを得ない
これほど深刻な事態を招いている抗がん剤が使われ続けているのはなぜなのか。
「乳がんや血液のがんなどは、アントラサイクリン系以外の抗がん剤では治療成績が落ちるため、がんを治すためには使わざるを得ません」
しかも、がん患者の増加に伴ってこの薬の売り上げはこの10年で約2倍に増えている。
「アメリカなどでもアントラサイクリン系の抗がん剤は使われていますが、副作用による心筋障害を防ぐ薬が28年も前に開発され、使われてきました。ただ、日本では認可がまだ下りておらず、使うことができないのです」
しかし、以前はその薬がないと治せないと考えられていたのだが、早くに心臓の異常を発見し、日本でもすでに承認されている心不全の薬を使えば、改善する場合があることがわかってきたのだ。
「心不全の症状は、足がむくむ、息が切れる、だるさ、動悸(どうき)など。その多くはがんの症状と同じで見分けるのは難しく、さらに心臓に不調が生じても症状が出ないこともあります。ですから早期発見には、心臓のエコー検査が欠かせません。
アントラサイクリン系の抗がん剤を使う場合は事前の心臓のエコー検査に加え、治療中も定期的な検査が本来は必須なのです」
ただし、心臓のエコー検査機は高額で台数が少なく、病院によっては混んでいてすぐに受けられないケースも。
「心臓はめったにがんにならないことから、これまで心臓の医師とがんの医師の連携が不足していて、定期的に心臓のエコー検査をするなどの体制が整っていない病院もありました。最近では新たに腫瘍循環器外来が作られるなど、徐々に連携が進んでいます」
がん治療で病院を選ぶ際は、腫瘍内科があるかどうかや、循環器科との連携が行われているかも確認したい。
この薬に注意!
・アントラサイクリン系
・免疫チェックポイント阻害薬
(下はすべて分子標的薬)
・トラスツズマブ
・ベバシズマブ
・ダサチニブ
・カルフィルゾミブ
・RAF/MEK阻害薬