しかし、死ぬのは「敵」だけではない。彼女の「味方」すなわち、その毒舌を支持してきたような世の同世代たちも敵と同じように減っていくのである。自分だけが元気でもどうにもならないこの現実が、彼女に「ブレ」をもたらしているのではないか。
また、夫人の敵でも味方でもない若い人たちにとって、彼女は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)などで身体を張った芸を見せる「おもしろいおばあちゃん」にすぎない。
裁判も人生のスパイス
『土曜はナニする!?』(フジテレビ系)では「デビュー夫人」としてさまざまなことに挑戦。一昨年の夏には300円ショップで爆買い経験をして、
「来週、ドバイに行くので」
と、カッコよく説明した。
が「目的は?」と聞かれると「イッテQ」と答えて、笑わせていた。そう、彼女はいまや国際的セレブというより、もっぱら「イッテQの人」なのだ。実際、その8日後の『イッテQ』では「デヴィ女子会 in ドバイ」と題した企画で、若いタレントたちとともに絶叫マシンに乗せられたりしていた。
つい先日も、手越祐也がSNSに夫人とのツーショットを掲載。『イッテQ』仲間ならではの仲良しな雰囲気が話題になった。このまま「おもしろいおばあちゃん」だけで生きていくのも悪くないのではないか。
もっとも、クラブホステスから大統領夫人、夫の失脚、テレビタレントへという波瀾万丈な日々を送ってきた彼女には、平和すぎる老後もちょっと物足らないのだろう。80歳の誕生日には、
「殺されるかと思ったり、地獄のような日々もありましたが」
と、過去を懐かしんでもいた。
普通の人にとっては一大事となる裁判も、彼女にとってはそうでもない。むしろ、人生を刺激的にするスパイスみたいなものなのだから。
宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)