目次
Page 1
ー 「戦いには男も女もない」
Page 2
ー “こうしたい!”っていうような熱意がなくなったらダメ
Page 3
ー 強い心で生き抜いてほしい

 

 “ミスター女子プロレス”の異名を持つ神取忍。そのレスラー人生は、異例の男女混合マッチから政治家挑戦と波瀾万丈。還暦を迎える彼女に、これまでの人生を振り返ってもらった―。

「戦いには男も女もない」

プロレスって自分が強いだけでは意味がないんです。試合相手がいて、お客さんがいて、関係者の全員が喜んで初めて成功する……。私がリングに上がって、投げられても起き上がる。どんな技を受けても立ち上がる姿は、見ている人に、何かしらのメッセージが届いていると思うんです」

 そう熱く語るのは“ミスター女子プロレス”こと、神取忍。

 15歳から柔道に打ち込み、高校卒業後に全日本選手権で3連覇、'84年の世界選手権で3位に輝いた実力を引っ提げて'86年に旗揚げされたばかりの『ジャパン女子プロレス』に入門。

 '93年に北斗晶と両者が血まみれになった伝説の喧嘩マッチ。'94年にはブル中野とお互いの手首に鎖をつないで戦うチェーンデスマッチなど、名勝負を繰り広げてきた神取。

 その中でも'00年、“ミスタープロレス”の異名を持つ、天龍源一郎との男女マッチはプロレス史に残る名勝負とされている。

普通の女子レスラーなら、天龍さんに挑戦しても軽くあしらわれて終わりだと思います。でも、天龍さんは私の挑戦を受け止めてくれましたから、一人の人間として私を見てくれていると感じましたね。私は、“戦いには男も女もない”と思っているんです。天龍さんが男子女子のカテゴリーを外して戦ってくれたのはとてもうれしかったです!

 この試合で神取は、顔が変形するほどの大ケガを負って敗北を喫したが、性別の垣根を越えて戦う姿から“ミスター女子プロレス”と称されるようになった。

“みんなでこうしようぜ。私のまねしてくれ”と主張しているわけではありません。自分の中にある信念で行動しているので。でも意外と、女性って男性に比べて痛みに慣れていると思いますよ

'21年に逝去した『LLPW-X』前社長風間ルミさんの追悼試合の写真
'21年に逝去した『LLPW-X』前社長風間ルミさんの追悼試合の写真

 あふれるエネルギーはリングの外でも発揮。'04年には参議院議員として国政にもチャレンジした。

「“ゆくゆくは政治家になりたい”と周囲に語っていたら、自民党の公認になったんですよ。当時は勉強不足で、何もわかっていませんでしたが、当選してから学びました。政治って基本的にみんなを助けたり、喜ばせるものですから、ある意味最高のエンターテインメント。プロレスとリンクしていると思います」