摂食障害と母との関係

 1歳半で両親が別居し、4歳のときに離婚。その後、母はギャンブルに手を出し、借金をするようになった。母と大ゲンカしたゆかさんが部屋の窓から飛び降りようとした、中学時代のエピソードが強烈だ。

《「わかった。じゃあ、ここから飛び降りて死ぬね」/泣きながらそう言って、母の顔を見た。(中略)/でも、母は表情ひとつ変えずに「バカじゃないの」と言った》

 家を空けることも多く、どうして帰ってこなかったのか尋ねるゆかさんに、「あんたの顔を見たくなかったからよ」と吐き捨てたこともあった。中でもキツかったのは、借金にまつわることだったという。

「母は親族からも借りていたので、“返してってお母さんに言って”と、私が間に立たされて。子どもだったからばか正直に母に伝えると、気を悪くして私に冷たくなり、今度は親族に“もう少し待ってって怒ってた”とそのまま伝えて、また私に怒りをぶつけられ……。

 いつも顔を合わせている人たちだったので、巻き込まれている状態がずっと続いているのが心理的にとてもつらかったです」

 また中学生のころから、家には母の彼氏らしき人が出入りするようになり、それもゆかさんの心を蝕んだ。

《むしゃくしゃした気持ちの反動で、コンビニで大量にお菓子を買い込んだ。そして、それを一気に食べ尽くした。ものすごく気持ちが悪くなり、トイレで吐いた。/胃から、さっき食べたアップルパイが出てきた。/嫌な気分が一緒に出ていったような不思議な爽快感があった。/その爽快感が私の心を捉えてしまったのである》

 そこから12年、過食嘔吐に苦しむことになる。だが、治したいと思うようになるまでには長い時間がかかった。

「母はギャンブル依存症でしたが、私の摂食障害も一種の依存症のようなものだったのかなと。吐くとほんの一瞬だけ、嫌なことが全部外に出て楽になった気になる。異常な行動だと今はわかるんですけど、当時は“この手段まで奪われたら自分はどうすればいいんだろう”と思っていたんです」