その人は約束の取材場所に、ダンディーな黒シャツ姿でやってきた。無造作にポニーテールに結んだ髪の長さは、腰に届かんばかり。「精神科のお医者さんです」と言われるよりも、「徹夜明けで、ちょっと不機嫌なミュージシャンです」と言われたほうがよっぽどしっくりとくる。
精神科医としての顔
実際、この3月には横浜でバンドの演奏会を開催した。担当はギター。リンパドレナージュのセラピストで、バンド仲間でもある大村かすみさんによると、
「先生、完璧主義者でメンバー4人での練習はもちろん、演奏の合わせどころはぴったりと合わせたいと、2人で練習したことも。ライブ中のMCも面白いんですよ」
そんな精神科医が、カメラマンからの「着ていただけますか?」の声で白衣を身にまとうと、表情が一気に和らぎ、悩める患者と真摯に向き合う医師のそれになった。
自らも物心ついてから研修医になるまでの20年間、アスペルガー症候群独特の「空気が読めない」「言葉の裏が読めない」「計画性ゼロ」「自分の気持ちばかりを優先してしまう」などなどからくる生きづらさに苦しめられ、30代半ばでそれを克服。
以来、この発達障がいの、よき医師兼理解者として多くの患者さんに向き合ってきた。
西脇医師を含め、日本ではまだ3人の医師しか行っていないという免疫置換療法に対しても、全国から自己免疫性疾患に苦しむ人々が相談にやってくる。潰瘍性大腸炎や難病指定されているシェーグレン症候群さえも治すという治療法だ。
そんな頼れる医師でありながら、「女性に憑依した犬神を1週間のヒーリングで祓った」と真顔で言い、超能力者・秋山眞人氏と河口湖でUFOを召還し、さらには、
「スプーン曲げ? 曲げたことはあるんですけど、あんまりうまくないんです。やわらかいと完全にイメージできれば曲げられますが、今はちょっと無理かなあ」(西脇医師)
ブラウザの検索窓で『西脇俊二』とググってみよう。“待ってました”とばかりにサジェストに登場するのは、『西脇俊二 トンデモ本』。
登場した著書をクリックし、何冊かのカスタマーレビューを覗いてみると、《トンデモ本にみえてやっぱりトンデモ本》と冷ややかに語る現役医師から、それについて《代替治療を批判するならホントに治った患者の声を聞いてからにしろ!》と怒りの声を上げる人、《素晴らしい精神科医なのにこんな本出したら誤解される》と心配する患者さんらしき人まで、賛否両論かしましい。