ストレスが健康に悪影響を与える可能性
終活の問題点はそれだけではない。死の恐怖や不安、迷惑をかけてはいけないというプレッシャーがストレスとなり、健康に悪影響を与える可能性も。
「日本人の死因の1位はがん。がんはできそこないの細胞が体内で増殖する病気と考えられていますが、この異常な細胞を排除する免疫細胞は、ストレスによって活性が大幅に落ちることがわかっています」(和田先生、以下同)
免疫力が低下すれば、がんだけでなく、コロナやインフルエンザなどの感染症にもかかりやすく、より重症化しやすくなる。
また、まだ起きてもいない死後の問題、例えば遺産分割でのトラブルを想像したり、お墓を継ぐ人がいない、と心配したりするうちに、うつ状態に陥るケースも。終活は一歩間違えば、心身の健康をむしばむ可能性もあるのだ。
「私は大勢のお年寄りを亡くなる間際まで診察してきました。その経験から感じるのは、我慢してきたことを後悔する人が、非常に多いということ。終活もやりたいことを我慢して行うと、今際(いまわ)の際に後悔することになりかねません。
死んでしまえば、その後に何が起こってもわからないのですから、遺族が多少もめたとしても、そこまで気を使う必要はないのではないでしょうか。
終活という言葉が登場する前は、遺族がさまざまな始末をするのが当たり前だったはず。それを迷惑と捉える考え方のほうが、おかしいと感じます」
遺族の負担を減らす必要があるかについては、養老さんも《人が亡くなって、残された家族や親族がいろいろもめるのは、後の人の教育だと思っていればよい》とバッサリ。