来たる7月3日、慣れ親しんだ日本銀行券(以下、紙幣、お札)のデザインが刷新される。
一万円札の顔を務めた福沢諭吉は、日本の経済史に名を残す渋沢栄一に変更。五千円札は小説家の樋口一葉から津田塾大学の創設者・津田梅子へ。医師で細菌学者の野口英世が担っていた千円札は“近代日本医学の父”こと北里柴三郎にバトンが渡される。
「お札に肖像が描かれる理由は『人の顔や表情のわずかな違いに気がつく』という人間の目の特性を活かし、偽造紙幣に違和感を抱きやすくするのが目的です。また、最先端の偽造防止技術が施されるのが特徴で、今回の新紙幣には3Dホログラムが採用されていますね」
そう話すのは、国士舘大学大学院客員教授で歴史作家の八幡和郎さん。
ニセ札対策も重要だが、紙幣に描かれる肖像画の人物も気になるところ。国立印刷局によるとお札の肖像には一定の基準を設けているというが、ほかにも適任者がいたのでは?と感じる人も多いはず。
そこで今回、全国の男女1000人に「お札になってほしい偉人」について答えてもらい、ランキングを集計した。はたして1位は誰の手に?
あの歌手がお札に難しい理由とは
10位にランクインしたのは、女性漫画家の草分け的存在である長谷川町子。
「長年愛されている素晴らしい漫画の作者だから」(愛知県・57歳・女性)との意見があるように、彼女の代表作『サザエさん』のアニメは、今年で放送開始55周年を迎える。
その間、時代は大きく変化しているが、今も多くの人に受け入れられる稀有な作品だ。
第9位には『銀河鉄道の夜』で知られる童話作家・宮沢賢治がランクイン。
「弱者に寄り添う姿勢を貫いた芸術家」(埼玉県・65歳・男性)、「国民的作家だと思う。生きているうちに評価されなかったが今は教科書にも載り、日本人の誰もが一生に一度は宮沢賢治の作品に触れているはず」(宮城県・54歳・女性)など、彼の作風が得票につながった。
続く8位は、昭和に活躍した歌手・美空ひばり。
アンケートには「後世に伝え続けたい昭和の歌姫」(宮城県・54歳・女性)、「国民栄誉賞を受賞しているから」(茨城県・67歳・男性)などの意見があがったが、八幡さんは「ひとつ懸念がある」と話す。
「当時は興業界と暴力団との関係が深かったので、山口組の田岡一雄組長が離婚記者会見にも同席していたほど。そのため、お札の顔になる可能性は低いでしょう。黒い交際がない昭和の芸能人から選ぶなら、寅さんを演じた渥美清や、世界に名の知れた三船敏郎はふさわしいかもしれませんね」(八幡さん、以下同)
三船敏郎がにらみを利かせるお札、ぜひ見てみたい!