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ー “どこから侵入されたか見当がつかない”
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ー トコジラミを見極める方法

 記者の自宅に中国格安通販サイトで買った商品が届いた。これからの季節に活躍する冷感ブランケットだ。ルンルンで荷をとき、触り心地をチェック。安いわりにいい感じ!と、ほくそ笑んだ瞬間に目が合った(と思った)。体長5ミリほどの赤茶色い甲虫だ。のんびりラグの上を歩いている。

“どこから侵入されたか見当がつかない”

 “おまえ、トコジラミか!?”

 次の瞬間、反射的にティッシュを引き抜き、力任せに押しつぶした─。安さに目がくらんで禍々しいものを自宅に招き入れてしまったのは、今年いちばんの後悔だ。すぐに検索し、絶望する。《海外からの積み荷に紛れ分布を広げる》(まさに)、《飢餓に強く2か月以上エサを取らなくても生き続ける》(荷物の中でも余裕だ)。記者の場合、侵入者が1匹でなかった可能性もあるし、つぶした個体が万一、交尾後のメスであった場合には購入品や発見現場のラグに卵を産みつけている可能性だってあるのだ……!

トコジラミが厄介なのは、その繁殖力の強さ。メスは1日に2~6個の卵を産み、1週間から20日ほどで孵化します。生まれて2週間ほどで吸血を始め、1か月ほどで卵を産めるようになる。ちなみに1匹のメスで年間500個の卵を産み約1年、個体によって長いと2年ほど生きます

 そんな気のめいる情報をくれたのは、創業から2万件以上もの害虫駆除・対策経験を持つ『害獣虫SOS』石井健伍さん。記者のように、海外通販で家に招き入れてしまうケースも多い?

「そういった事例もありますが、江戸時代の昔から“南京虫”と呼ばれ、海外から日本に持ち込まれていました。現在の“トコジラミ”の名は英名のBed bugの直訳。戦後、DDT(殺虫剤)などによる駆除で1970年ごろに一度姿を消したのですが、訪日観光客の増加により、再び被害が報告されるようになりました。暖かくなった5月くらいから一般家庭の相談件数も増えていますが、“どこから侵入されたか見当がつかない”とみなさん首をひねっています」(石井さん、以下同)