ちなみに、このケースでは夫婦別々のお墓に入ることを子どもも了承済みだったそう。

「従来の一般墓なら、お墓の維持費用として継続的に管理費を支払わなければなりません。しかし、このケースで購入された夫婦墓は管理費不要のタイプで、お子さんたちが2基分の管理費を払う必要がありませんでした。その点も決め手になったようです」

 夫が亡くなってから、妻が自分1人で入るお墓を購入するケースも多い。

「夫の葬儀で泣いていた方が『あのときは雰囲気で泣いちゃったのよねえ』とおっしゃりながら、お墓の相談に来られるケースは珍しくありません。ご主人はすでに他界していて気を使わずに済むこともあり、非常に明るい顔をされていますね」

 そんなに嫌だったのなら、夫の存命中に離婚したほうが幸せになれたのでは、とつい考えてしまうが……。

「そこまで嫌いではない、ということかと思います。暴力や借金など深刻な問題があれば、さすがに離婚されるでしょうから〈離婚で生活が一変するリスクを冒すほどではないけど、死後もずっと一緒と思うと憂鬱(ゆううつ)になる〉という方が、あの世離婚を選択されているのではないでしょうか」

樹木葬は墓石の代わりに樹木や草花をシンボルとして、その周辺に遺骨を埋葬。合祀されることが多く遺骨の取り出しができないデメリットも※写真はイメージです
樹木葬は墓石の代わりに樹木や草花をシンボルとして、その周辺に遺骨を埋葬。合祀されることが多く遺骨の取り出しができないデメリットも※写真はイメージです
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ケース2

 意外に多いのが、両親と娘の3人で、購入相談に来るケース。

「結婚した女性が、婚家ではなく実家のお墓に入ることを希望されることはよくあり、その場合、ご両親と一緒にお墓選びに足を運ばれます」

 購入するのは親だが、将来、娘も一緒に入ることを想定。家族分の納骨が可能なお墓を選ぶそう。では、娘の夫もこれを了承済みか、というと、案外そうでもない様子……。

「お話を伺うと、ご主人には内緒で来た、というケースがほとんど。夫は先に亡くなると予想。お子さんたちに10~20年かけて少しずつ実家のお墓に入ることを伝えていくつもり、という方もいました」

 “あの世離婚”と聞くと、ケース1のように〈夫が嫌だから同じ墓に入りたくない〉と単純に考えがち。だが、夫本人よりはその親族と同じ墓に入ることを敬遠する女性も多いとか。

「婚家の墓には、夫のご先祖様がすでにいらっしゃいます。しかし、夫のご先祖様は妻からすれば、仏壇の遺影写真でしか見たことがなく、知らない人ばかり。その中に入るのは気が進まない、それなら育ててくれたご両親と一緒のお墓に入りたい、と考えられるようです」