価格もお手頃なお墓の種類が増えた

 あの世離婚が急増している背景には、家族意識の希薄化以外の要因ももちろんある。主な理由の一つとしてあげられるのは、お墓の多様化。

「かつては家族や一族など家単位で継承していく一般墓しか選択肢がありませんでしたが、今は建物の中にお骨を納める納骨堂や、樹木の根元にお骨を納める樹木葬など、さまざまなタイプのお墓が登場しています。

 個人か家族単位かも選べるし、遺族の代わりにお墓を管理・供養してくれる永代供養がついているお墓も多く、その方の希望や家庭事情に合わせて選べるようになりました」

 株式会社ニチリョクが2022年8月、40代~70代の男女1000人を対象に行った調査で、〈どのような種類のお墓・供養をしたいか〉を尋ねたところ、トップは納骨堂で、30.6%。樹木葬は20.7%。大きな一つのお墓に、血縁関係のない人たちと一緒に入る合祀(ごうし)墓と答えた人も15.7%いた。

 一方で、従来の一般墓と答えた人はわずか23.4%。さまざまな選択肢の登場で、人々のお墓に対する意識が多様化していることがわかる。そんな中、今後、新たなブームとなりそうな動きも。

「今、非常に話題なのが前方後円墳型のお墓。福岡県で売り出したところ、販売目標を大幅に超える応募が殺到しました」

Q.どのような種類のお墓・供養をしたい、またはしましたか?
Q.どのような種類のお墓・供養をしたい、またはしましたか?
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 その他、海や山などに遺骨を撒く散骨も普及しつつある。こうした供養方法は金銭面の負担が軽く、それもあの世離婚を“後押し”。

「一般墓の購入には百万円単位のお金がかかります。その後も管理費はもちろん、お墓を継ぐ人がいなくなった場合、墓じまいの費用まで必要に。

 しかし、新しいタイプのお墓なら10万~20万円から購入が可能。それなら女性も気軽に手が出せますし、永代供養つきで管理費や墓じまい費用が不要のタイプを選べば、子どもに迷惑をかけることもありません」

 では、“あの世離婚”したい場合、注意すべきことは?

「大抵の場合、おひとりで入るお墓は合祀(ごうし)墓です。骨壺から焼骨を取り出して他の人のご遺骨と一緒になります。

 よくお子さんが〈遠くて墓参りになかなか行けないので、近くに納骨したい〉と希望されることがありますが、いったん合祀墓に納骨すると、お骨を取り出すことは難しくなります。納骨する前によく検討することをおすすめします

 そもそも納骨するのは遺族なので、どのお墓に入りたいのか、きちんと伝えておかねばならない。

お墓を管理をするのは、子どもや親族の方々。お墓が別々で離れた場所だと、お墓参りも2か所行くことになり、維持費などの負担もかかる場合があります」 

「夫」や「家」に縛られたくない、死んだ後くらい自由にさせてという妻の“反乱”。まさに「知らぬが仏」は夫ばかり──。


取材・文/中西美紀