見栄を張らずに“お得”を突き詰める

 お金はあるに越したことはないし、実際、八木さんもお金を稼ぐことで幸福度が上がっていった時代があった。

「大阪時代は年収が110万円ぐらいやったんですよ。そんときは、月の食費は1万5000円と決め、1日3食を500円に抑えないとダメで。

 炊飯器でご飯を炊いて冷凍して、楽屋には弁当を持参。移動はすべて原付バイクで、テレビ欄はコピーしてもらって……。このゾーンから抜けたときは急激に幸福度が上がりましたね」

 月収が5万円から10万円、20万円と増える中で、食事も100円の菓子パンから600円のお弁当、さらにその上へとレベルが上がっていった。

「ただ、月収30万円が僕の中では幸福度の天井でした。それを超えると使えるお金は増えても、幸福度は変わらなくなったんです」

 10代のころから、モノに対して“その値段分の価値があるか”という費用対効果で見極める習慣がついていたという八木さん。収入が増えてもそれに踊らされずに地に足のついた生活を送ってきた。

 自著の中でも、「週刊の漫画雑誌は1週間ズラして安く読む」、「高価なウイスキー『白州』は空き瓶に『トリス』を詰め替えて気分を味わう」、など独特な節約術を紹介している。ほかにも倹約術を伺うと、

「外食費は、東京で飲みに行って2軒はしごしても3000円超えないです。ボトルを入れれば安くすむんですよ。あとはおつまみ1品150円ぐらいの激安居酒屋と、月300円払えば食事もお酒もお得になる“サブスク居酒屋”を行きつけにしています」

 家族が住んでいる大阪でも、「たぶん日本でいちばん安い」という激安スーパーを利用して食費を抑えている。

「結局、知ってるか知らないかがデカいんです。そのモノの値段の相場感を頭に入れておくことと、お得なことを知ったら10年間同じことを積み重ねることが大事。

 大阪時代に地下鉄の回数券があって、3000円で3300円分乗れたんです。10年続けるとすごい得になるっていうね。でもなぜかみんなやらないんですよ。居酒屋でもボトルで頼むほうが安いのに、グラスで頼むのもわからないし」

 “絶対お得”にもかかわらず、多くの人がやらなかったり知らないと感じることが多かったのが本を書くきっかけにもなったという。

「まずは芸人に教えたかったんです。楽屋だと、“また言ってるわ”って聞いてもらえないんで(笑)」

八木真澄 撮影/矢島泰輔
八木真澄 撮影/矢島泰輔
【写真】サバンナ八木、著書を手に語る姿