「脳梗塞とくも膜下出血、そして脳内にある細い血管が出血してしまう脳出血 、この3つをまとめて脳卒中と呼びます。勘違いする人が多いのですが、脳卒中は脳の病気ではなく血管系の病気です」
生活習慣を見直すことで必ず改善できる
かつて日本人の死因トップだった脳卒中も、予防対策の広まりや技術進歩での早期発見がしやすくなり、今では第4位にまで下がってきた。
「ただ、死亡率が下がった反面、要介護者が増え社会経済的には大きな負担になっています。それに、重い後遺症や再発のリスクを抱える人が多い病であることは変わりません。何よりも予防が第一、それには動脈硬化を悪化させないこと」
具体的にどんな対策をとれば、食い止められるのだろうか?
「動脈硬化を加速させる “主犯”は高血圧、糖尿病、高コレステロールと痛風です。特に高血圧と糖尿病は徹底したコントロールが必須。そのうえで禁酒や禁煙、極端な肥満を避けるなど、生活習慣を見直すことで必ず改善できます」
夏の脱水症状が血管系にダメージを与えるというから、今の時期は要注意。
「ある研究では 、脳梗塞の発症者数に季節による差はほぼないそうです。ですが、近年の夏の暑さは血管系にも悪影響を及ぼしています。体内が脱水状態になると血流も悪化し、血栓ができやすくなる。つまり梗塞を起こしやすい。熱中症で救急搬送された人が脳卒中にもなっていた例は、 珍しくありません」
高齢者はもちろん、コロナ禍からの出不精グセで筋力がすっかり衰えたと嘆く人は、とくに脱水に要注意だ。
「筋肉は水分を蓄えるので、筋肉量の少ない女性は脱水になりやすい。加齢で骨格筋の量が減少し、筋力が低下するサルコペニアの問題も無視できません。体内で最も筋肉量の多い足を動かすことも、実は立派な脱水対策です」
脱水と同様、脳卒中の早期発見には周囲の気づきも大切だ。元テレビ東京の大橋未歩アナウンサーは34歳で脳梗塞を発症した際、顔半分に麻痺が出ていることに家族が気づき、すぐに救急を呼べたそうだ。
「脳出血と違って脳梗塞に痛みは伴いません。脳梗塞に早く気づけるよう初期症状をまとめました[上の図参照]。これらの兆候は一過性で消えることもありますが、甘く見ないこと。 脳梗塞を含めて脳卒中は再発の可能性が高いのです。例えば脳梗塞は、発症後4時間半以内なら血栓を溶かす薬が使えます。重い後遺症を出さないためにも、脳卒中治療は時間が勝負です」
40代以降になると悩まされる首の不快症状。普段の身体的な疲れや姿勢の悪さから
「また、こってる」くらいですまさず、“身体からのサイン”を大切にしたい。
取材・文/富田ひろみ
瀧 琢有先生 医誠会国際総合病院脳神経外科顧問1983年山口大学卒業後、大阪労災病院、サンパウロ州立大学などで研修および勤務の後、関西労災病院副院長に就任。2022年からは医誠会国際総合病院脳神経外科顧問として活躍中。