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ー 日常的に温水洗浄機能に頼るのは極力避けるべき
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ー 洗いすぎは本来の免疫機構やバリア機能を損なう原因に

 

「女性の約4割が、間違ったお尻の拭き方をしている」という調査結果が。だが、泌尿器科医の二宮典子先生によると、「拭き方だけではありません。日本人は特に、お尻やアソコをきれいにしなければと思うあまり、過剰な洗い方がトラブルを招いています」膀胱炎、膣炎、気になるニオイのリスクにつながるNGケア方法とは?

日常的に温水洗浄機能に頼るのは極力避けるべき

 ある調査によると、お尻を拭くとき、44%の女性が“後ろ(肛門側)から前に向かって拭いている”という結果が公表されている(出典:Cureus 2024:16:e58104より)。拭き方に正解はあるのだろうか。

女性は子どものころに、後ろから前に向かって拭くとばい菌が尿道に入ってしまうからと、お尻側から手を回して前から後ろに拭くように言われた人もいると思います。膀胱炎などの感染リスクの面から考えるとその教えは間違っていないと思います

 そう話すのは、婦人科と泌尿器科が専門の二宮典子先生。膀胱炎は、主に腸の中にいる大腸菌や腸球菌が原因となるが、女性は肛門のすぐ近くに尿道口があるため、拭き方によっては膀胱炎の発症リスクが高まる。とはいえ、この拭き方が“絶対”ではないので、そこまで縛られなくてもいい、と二宮先生。

大半の女性が、排尿後は前側から手を入れて拭いています。排便時には尿も一緒に出ますから、前から手を伸ばして尿とウンチを拭くのは自然な動きだと思います。また、加齢による体形の変化や肩の可動域が狭くなることで、後ろから手を回してしっかり肛門を拭くことがつらくなっていくことも考えられます。

 大事なことは、どちらから拭くとしても、膣や尿道側まで汚れをもってこないこと。その手前で止めるようにすればばい菌を広げることはありません」(二宮先生、以下同)

 逆に、後ろから手を回して拭いても、ゴシゴシと往復してしまえば、菌を広げてしまうことになる。

特にキレの悪いベタベタした便のときは、肛門にペーパーをペタッと貼って汚れを塗り広げないようにサッと拭き取るようにしましょう

 先生はむしろ、問題は拭き方より温水洗浄機能の使いすぎにあると話す。

排便後、お尻を拭かずに温水洗浄機能、いわゆるウォシュレットを使って洗い流そうとすると、目には見えない菌が陰部全体にも飛び散ってしまいます。温水洗浄機能を使ってしまえば、前から拭こうが後ろから拭こうが、あまり関係なくなってしまいます

 体調を崩して水っぽい便や、やわらかい便が出たなどの一過性の状況で使うのはしょうがないが、日常的に温水洗浄機能に頼るのは極力、避けてと二宮先生。

そもそもは、お尻をしっかり拭かないとダメな状態の便が続いていることが問題です。快便の場合は排便もスムーズでほとんど肛門も汚れないからです。ベタベタした便や下痢っぽい便の人は、肛門付近に便が残りやすいため、余計に温水洗浄機能を使いたくなるのだと思います。

 アルコールや辛いものをとりすぎたり、便秘だからと下剤を飲みすぎたりといったことは控え、いいウンチが出る状態を目指すことが膀胱の健康にもつながります」

二宮典子先生
二宮典子先生

 膀胱炎というと、忙しくてトイレを我慢することが多い人や、若い女性が性行為の後にかかる病気というイメージで知られる。そのため、そういった心当たりがなければ、拭き方さえ気をつけていればいいんでしょう?と考える読者も多いかもしれない。

確かに、きっかけとしては尿意を我慢することや性行為が多いです。ですが更年期以降の女性ではそういったきっかけもなく膀胱炎を発症しやすくなり、かつ治りにくくなるのも特徴です