とはいえ、肉や魚が軒並み高くなっている現状ではなかなか手が出せない……。
「タンパク質の補充には、卵と乳製品は狙い目かもしれません。比較的価格が安定しているし、スーパーの目玉商品となることも多い。朝食に牛乳1杯を添えてみたり、めん類で簡単に済ます昼食に卵を加えたりしてみてください」(新開先生)
時岡さんがすすめるのは豆類だ。
「豆腐や大豆料理はおすすめです。大豆から作られるきな粉は減塩にも最適。きな粉牛乳にしてもいいし、バターを塗ったパンにきな粉を振れば、バターでしっとりとして食べやすくなります」(時岡さん)
料理が面倒ならば肉はハムやソーセージ、魚は缶詰や魚肉ソーセージを利用するのも手。とにもかくにも、タンパク質はシニア世代の健康維持にまずとってほしい栄養素と新開先生。
「身体は細胞の合成と分解で成り立っています。シニアでもよく運動したりよく食べると合成が促進されますが、平均的には分解のほうが優勢で、食べる量が減ると、身体はシュリンク(収縮)していきます。
筋肉だけでなく、骨や臓器、脳も減っていくし、血管も柔軟性を失います。こうしたものの機能を保つためには、タンパク質が欠かせません」(新開先生)
「さあ、にぎやかにいただく」を心がける
シニア世代で自分が低栄養状態にあるとは気がついていない人が多いのだそう。カロリーは足りており、お腹は満たされている。体調不良がなければ自覚はしにくい。
「ぜひ一度、『指輪っかテスト』を試してみてください。両手の親指と人さし指で輪っかをつくり、ふくらはぎの一番太い部分をつかみます。
ふくらはぎの太さは、全身の筋肉量と比例するんです。指輪っかで囲めなければ合格。指と指がつながるようだと、筋肉量減少が考えられます」(時岡さん)
時岡さんによると、地域で暮らす高齢者が30人いたら3~4人、1~2割ぐらいはこの指輪っかテストで筋肉量減少のサインが出ているとか。