やせられない“負のスパイラル”

 脂肪肝、糖尿病と、さらにこの負のスパイラルに拍車をかけるのが「歯周病」。

歯周病はあらゆる病気のリスクを高めますが、脂肪肝や糖尿病との関連も深いのです。歯周病で口腔内に炎症が起きると『炎症性サイトカイン』という物質が発生します。この物質はインスリンの働きを阻害するため、血液内に糖があふれて血糖値を上昇させます。

 すると余分な糖は肝臓へと送られ、中性脂肪をどんどん蓄え、脂肪肝を悪化させていき、さらに糖尿病のリスクも上がり、糖尿病になると歯周病もさらに悪化し……と、まさに負の連鎖に陥るのです」とは、歯科医師の栗原丈徳先生。

 歯周病をケアしないと、インスリンが正常に働かず、ダイエットを阻害するどころか病気にもなってしまうのだ。

 歯周病菌は、歯茎から血管に入って血流にのり全身をめぐってさまざまな病気を引き起こす原因になるが、近年は消化管からも侵入することがわかってきた。

かつては、口の中の有毒な悪玉菌は、食べ物や唾液と一緒に体内に入っても、胃酸で死滅すると考えられていました。しかし一部に腸まで届く菌もいて、それらが腸内環境のバランスを崩し、悪影響を及ぼすことがわかっています。その結果、身体の代謝機能も低下して、やせにくい身体になります。

 また最新の研究で、腸内環境が変わることで、骨格筋の代謝異常による脂肪化が促進することもわかってきました。筋肉が脂肪化すると、筋力の低下や肥満を促す可能性があるのです」(栗原丈徳先生、以下同)

 しかも、50代以上では歯周病菌を持っていない人はいない、と思ったほうがいいと先生。やせるのはもちろん、身体のためにも正しい歯周病ケアは待ったなしだ。

歯周病菌は寝ている間に増えやすいので、寝る前は念入りに。加えて絶対にやってほしいのが起きてすぐの歯みがきです。寝ている間は唾液の分泌量が減るために起床時は歯周病菌がいちばん増えています。その状態で飲食をしてしまうと菌が体内に入り込んでしまい、腸内環境を乱す原因に。いくら“白湯や野菜ジュースを飲む”といった健康習慣や腸活をやっていても、それでは台無しです」

 みがく際は歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやフロスを併用することも必須。

「時間をかけて丁寧にみがいたとしても、プラーク(細菌の塊)は60%ほどしか除去できないことがわかっています。みがき残しのプラークのほとんどは、歯と歯の間や歯と歯茎の間にあるので、歯間ブラシやフロスを併用することでみがき残しを最小限に抑えてほしいですね」