主婦層にウケる要素
「もう無理」とリタイアする視聴者が続出し、“反省会”さえもほぼ消滅。ついに墜落か――と思われたが、第8週目に入り、視聴率は少しではあるものの上向きになってきた。
その原因がどこにあるのか、前出のテレビ誌ライターはこう語る。
「作品の舞台は福岡県・糸島から神戸に移り、栄養士を目指す主人公・米田結は神戸の専門学校に入学します。年配の視聴者が辟易していた“ギャル”がほとんど出なくなったことと、『神戸編』に入り、キムラ緑子や小手伸也、山本舞香、松井玲奈、相武紗季などちょっとクセがある芸達者が顔をそろえたこと。ドラマがヒットする要素の1つ、“脇が固まった”ということですね。また、毎日何かしらのアクシデントが起き、ヒロインがピンチに陥るのも朝ドラらしくて、面白くなったと感じる視聴者が増えたのではないでしょうか」
加えて、「隠されていたテーマが表に出てきたことも、好転した要因ではないか」と話すのは朝ドラファンでもあるベテラン映画記者。
「『栄養士』というのは、食品ロスや生活習慣病が話題になる現代に沿った職業だと思います。“食”の大切さを伝える、というのも大きなテーマだったはず。しかし、残念ながら『糸島編』ではそれが伝わってこなかった。
第5回ではギャルが栄養失調で倒れたシーンがありましたが、そこからヒロインがギャルたちに食育をし、偏食ギャルを救いにいくのかと思っていたら、そうはならなかった。糸島産の野菜は登場しましたが、料理そのものはあまり描かれていません。テーマとまでいかなくても、これまでも“食”が描かれた朝ドラはいくつかありましたが、『おむすび』はちょっと毛色が違いますね」
第40回の放送で、主人公たちが自分で献立を考え、実際に料理を作るシーンがあった。スーパーに食材を買いに行くが小松菜が売り切れていたところ、結は代わりになる野菜『スイスチャード』を発見。見慣れない野菜の登場は、ネット上で話題になった。
「“食”をテーマとしていても、ふつうのドラマでは出来上がった料理を見せるくらいです。『おむすび』ではレシピが紹介され、完成した料理もお目にかかれる。さらに、目当ての食材が切れているときの代替品まで教えてくれるのは、まるで料理番組です。批判もあるかと思いますが、今後どんな料理が出てくるか楽しみですし、“おばあちゃんの知恵袋”的な要素も加わって、主婦層にウケるのでは。朝ドラの視聴者はほとんどが主婦層と言ってもいいくらいですから、視聴率アップに繋がるんじゃないでしょうか」(同・映画記者)
果たして、リタイアした視聴者を取り戻すことができるか……。