漫画を描く際は、読者の共感を最も重視しているという、しろやぎさん。家族からのアドバイスが作品作りに役立っている。

「展開に悩んだときは、妻に読んでもらって、感想を聞きます。『こういう考え方や反応は違うんじゃないか』と、はっきり言ってもらえるので、ありがたいですね」

 暗いシーンを描くときは、気持ちが沈むこともあった。しろやぎさん自身、2人の子を持つ父親だ。

「いじめの描写は、やはりしんどいですね。どうしても子どもたちに重ねてしまうからです。でも、だからこそ、読者に響くシーンになっているのかなと思います」

 もともとは、公立学校の常勤講師を10年くらいしていたというしろやぎさん。退職後、1年ほどの休職期間を経て、SNSで絵日記を出すように。それが今につながるキャリアのスタートだった。作品を公開するうちに、少しずつファンが増え、現在の総フォロワー数となった。

心霊現象を描いた漫画も人気に

 フォロワーから募集した体験談も漫画にしているが、その中でも特に人気なのが『フォロワーさんの本当にあった怖い話』SNS上で募集をかけると、何百という体験談がDMに届くという。

「びっくりするような恐怖というよりは、霊が何か伝えたいことがあって、それが心霊現象になったというものが多いです。例えば、亡くなった家族がお盆に現れたりとか。会いたいと思う心が、そういう現象を引き起こしているのかなと、読んでいて感じます」

 しかし、中には載せられない話もあるそうで──。

「実際に起きた事件に関連する話も、たまに送られてきますね。固有名詞が出てくるものは作品にしづらいので、採用を見送っています」

 また、明らかに創作とわかる話が送られてくることもあるという。

 いじめ、心霊、日常系と、さまざまなジャンルの作品を描くしろやぎさん。次回作のテーマは未定というが、ネタ集めのために、ニュースはよく見ているという。

 描くのが難しいのは、「心霊現象よりも、人間同士のいざこざ」だとしろやぎさん。読者が読みたいのも、きっとそういう作品だろうと話す。

「社会の変化に合わせて、読者が一番読みたいと思うものを、作品にしていけたらと思っています」

しろやぎ秋吾著『娘はいじめなんてやってない』(KADOKAWA/税込み1540円)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします
【写真】作中でリアルに描かれる学校でのいじめシーン

『娘はいじめなんてやってない』
ある小学校で、小学6年生の男子児童が学校の屋上から飛び降りた。現場に残された遺書からいじめを苦にしての自殺未遂と推測された。ところが、被害者と思われた男子児童はかつて、いじめの加害者だったことがわかる。はたしていじめの本当の「加害者」は誰なのか。いじめ問題のタブーに斬り込んだセミフィクション。

『娘はいじめなんてやってない』著者・しろやぎ秋吾さん
『娘はいじめなんてやってない』著者・しろやぎ秋吾さん

しろやぎ秋吾(しろやぎ・しゅうご)
イラストレーター、漫画家。SNS、ブログでフォロワーから募集した話や家族の話を公開している。著書に『フォロワーさんの本当にあった怖い話』『すべては子どものためだと思ってた』(共にKADOKAWA)など。


取材・文/中村未来 漫画/『娘はいじめなんてやってない』より