谷本さんは、「欧米でやたらと日本の存在感を後押しするような動きが広がっている」と指摘し、ここ最近のエンタメ業界は最たる例だと続ける。

『ゴジラ-1.0』『SHOGUN 将軍』は、ともに素晴らしい作品でしたが、前者はアジア映画として初のアカデミー賞・視覚効果賞を受賞し、後者はアメリカのテレビ業界で最も権威ある賞のエミー賞で、史上最多となる18部門を受賞しました。

 また、昨今は海外のゲーム会社が、日本を舞台とするゲームを作ることも珍しくありません」

韓流に代わって日本コンテンツが台頭

 うれしい反面、「急にどうした?」と感じている読者も少なくないはず。こうした動きは、「2025年も加速していくのではないか」と谷本さんは推測する。

「イギリスで動画配信サービスを見ていると、私の趣味嗜好に関係なく、オススメに上がってくる日本のコンテンツが明らかに増えました。対して、少し前まで席巻していた韓流ドラマやK-POPが影を潜めるようになってきた。

 Creepy Nutsはイギリスでも人気が高いです。
明らかに、日本のカルチャーにスポットを当てよう、日本推しを進めよう、という雰囲気があるんですね」

2023年に東京・明治神宮で行われた奉納相撲
2023年に東京・明治神宮で行われた奉納相撲
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 実は今年、イギリスでは34年ぶりとなる大相撲のロンドン公演が10月に開催される。

「開催場所はロイヤル・アルバート・ホールです。ここは政府関係のイベントを行うような場所で、お金さえ払えば誰でも使用できるといった場所ではありません。格式が高く、外交的な要素がとても強い

 谷本さんは、「水を差したくはないのですが」と断ったうえで、

「対中国を考えたとき、西側諸国にとって日本はキープレーヤーとなります。『日本には頑張ってもらわないといけない』という思惑があるため、欧米諸国が“強い日本”“優れた日本”を演出しているのではないかと勘繰ってしまう(苦笑)」

 もちろん、どんな理由であれジャパニーズクオリティーが世界的に評価されることは良いことだともつけ加える。

「日本のカルチャーやエンタメに対して、ここ最近では見られなかったような盛り上がりがあります。裏を返せば、ビジネスチャンスです。こうしたコンテンツを追い風にして、世界を驚かせてほしい」

 はやし立てられたとしても、“踊らにゃそんそん”。世界のエンタメの動向を知ることも、ひるがえって日本を知ることにつながるのだ。

『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス【PLUS】新書)、『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)など著書多数。※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

たにもと・まゆみ 1975年、神奈川県生まれ。著述家。元国連職員。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融企業を経て、現在はロンドン在住。X(旧Twitter)上で「めいろま」として舌鋒鋭いポストが注目を集めている。累計50万部の『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス【PLUS】新書)など著書多数。

取材・文/我妻弘崇