目次
Page 1
ー 保育園に通う娘との外食
Page 2
ー 人生の音程を整える“調律師”として
Page 3
ー パリコレで“モデルデビュー”!
Page 4
ー 視覚障がい者のためのボクシング

 

 カラフルな服や靴で身を包み、颯爽と街を歩く男性。彼の手には“白杖”が握られていた──。

僕は、少しずつ視力を失う難病『網膜色素変性症』を3歳のときに発症して、15年前に失明しました。今は、かろうじて“光”を感じる程度なので、自分では着ている服の色や髪の色はまったくわかりません。

 でも、こんな格好をしていると『服や靴はどうやって選ぶんですか?』と話しかけてくれる人がいて、そこからコミュニケーションが始まる。僕は常に“積極的受け身”の姿勢で生活しています」

保育園に通う娘との外食

 そう話すのは、自他共に認める「世界一明るい視覚障がい者」として、講演会やコンサルティング、メディアで活躍する成澤俊輔さんだ。

 現在、2児の父でもある彼は「子どもたちとのコミュニケーションがとにかく楽しい」と話す。

「娘が保育園に通っている年齢のころは、2人だけで外食をするたびに事件が起きていましたね。僕は目が見えないし、当時の娘は文字が読めないから、メニュー表を渡されてもオーダーできないんです。

 四苦八苦したのちに店員さんを呼び、メニューを読んでもらってやっと注文できる。
あのころの僕らは2人でいても『大人1人』にも満たないのが面白かったですね」

 そうした経験から「寿司店はひらがなが多いので子どもでも注文できる」「漢字が多い店はNG」など、成澤家のライフハックが蓄積されていったという。

「いずれ僕たち家族の日常を4コマ漫画にしたいんです。めっちゃ笑えますよ」

 何げない毎日もユーモアに変えるのが成澤流だ。