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カラフルな服や靴で身を包み、颯爽と街を歩く男性。彼の手には“白杖”が握られていた──。
「僕は、少しずつ視力を失う難病『網膜色素変性症』を3歳のときに発症して、15年前に失明しました。今は、かろうじて“光”を感じる程度なので、自分では着ている服の色や髪の色はまったくわかりません。
でも、こんな格好をしていると『服や靴はどうやって選ぶんですか?』と話しかけてくれる人がいて、そこからコミュニケーションが始まる。僕は常に“積極的受け身”の姿勢で生活しています」
保育園に通う娘との外食
そう話すのは、自他共に認める「世界一明るい視覚障がい者」として、講演会やコンサルティング、メディアで活躍する成澤俊輔さんだ。
現在、2児の父でもある彼は「子どもたちとのコミュニケーションがとにかく楽しい」と話す。
「娘が保育園に通っている年齢のころは、2人だけで外食をするたびに事件が起きていましたね。僕は目が見えないし、当時の娘は文字が読めないから、メニュー表を渡されてもオーダーできないんです。
四苦八苦したのちに店員さんを呼び、メニューを読んでもらってやっと注文できる。あのころの僕らは2人でいても『大人1人』にも満たないのが面白かったですね」
そうした経験から「寿司店はひらがなが多いので子どもでも注文できる」「漢字が多い店はNG」など、成澤家のライフハックが蓄積されていったという。
「いずれ僕たち家族の日常を4コマ漫画にしたいんです。めっちゃ笑えますよ」
何げない毎日もユーモアに変えるのが成澤流だ。