長寿の秘訣は
永明はアドベンチャーワールドで梅梅(めいめい)との間に6頭、良浜との間に10頭もの子どもをなし、「パンダ界のレジェンド」「グレートファーザー」とも呼ばれた。ジャイアントパンダの繁殖はメスの発情期が短く、オスとメスの相性とタイミングを測るのが、特に難しいとされている。永明はどうしてここまで繁殖に成功できたのだろうか。
「みんな口をそろえて言うのが、永明の優しくて穏やかな性格と先述のメスの発情に気づく能力に長けているところが大きいと思います」
永明は2020年に28歳で楓浜のお父さんになり、「現在の飼育下で自然交配し、繁殖した世界最高齢のジャイアントパンダ」という世界記録を持つ。通常、パンダの繁殖年齢は20歳までとされており、永明がいかに高齢で繁殖に成功したかがわかる。
「永明は健康で常にベストな状態を保てていたことで、高齢になっても繁殖ができたのでは。永明を飼育してきた先人の方たちが積み重ねてできたものだと思います。永明は、もともとはお腹が痛くなり、体調を崩しやすいパンダだったんです」
永明が丈夫でいられるよう尽力してくれた飼育員たちのおかげだ。
永明は32歳まで生き、人間でいうと90代後半だった。
「食欲旺盛で1日15キロ~20キロ、美味しい竹をたくさん食べていたことが長寿の秘訣かなと思います」
'23年2月に永明が娘の桜浜(おうひん)、 桃浜(とうひん)とともに中国に返還されるとき、中谷さんはどう思ったのだろうか。
「まだまだ一緒にいたかったという思いはありました。パンダの飼育員として勤務して8年になるのですが、竹の選び方や健康管理など飼育員として育ててくれたのも永明だと思います。感謝の気持ちを持って送り出しましたね。中国の高齢のパンダに対する飼育技術が整った場所に旅立ちましたので、不安は全然なかったです」