健康寿命を延ばす鍵は葉酸とDHA
日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳を超えた。
「でも、世界的にみて日本は高齢者に占める要介護や認知症の人の割合が多い。僕は高齢期の人の幸せは、死ぬ前日まで日常活動ができることだと思います。健康寿命をいかに延ばせるかが長寿国の課題ですね」
遺伝子及び栄養学が専門の香川先生が、健康寿命の鍵を握る栄養素として強くすすめるのが、葉酸とDHA(ドコサヘキサエン酸)だ。
「葉酸は、認知症や動脈硬化等のリスクを減らす最強のビタミンとして世界的に注目されています。アメリカでは1日の推奨摂取量は400マイクログラムです」
かたや日本の厚労省基準では一日の推奨摂取量は240マイクログラム。
「これでは全然足りません。というのも日本人の6割は葉酸が欠乏しやすい遺伝子を持っているからです。それでも一日400マイクログラムとれれば、葉酸による健康効果はしっかり得られます」
葉酸はホウレン草やブロッコリーなどの緑黄色野菜や、大豆に多く含まれている。それに水溶性ビタミンなので、食物からのとりすぎの心配はないそう。
「ただ、野菜だけで補うのは困難。穀類に葉酸の添加を義務づけている国は86か国もありますから、葉酸米を白米と炊くのも一つの方法です」
青魚に多く含まれるDHAも、認知症のリスクを減らす重要な栄養素。これもまた日本人の6割が欠乏しやすい遺伝子を持っているという。
「実は、魚を食べない禅僧でも健康上の問題はありませんでした。海藻類にもDHAが多く含まれているからです。塩分過多の短所はありますが、本来の和食をベースに、私たちの遺伝子や年齢を考慮した食べ方で健康寿命を延ばしたいですね」
香川靖雄先生
女子栄養大学副学長、自治医科大学名誉教授。東大医学部卒。専門は生化学・分子生物学・人体栄養学。著書に『92歳、栄養学者。ただの長生きではありません!』(女子栄養大学出版部)など多数。
女子栄養大学副学長、自治医科大学名誉教授。東大医学部卒。専門は生化学・分子生物学・人体栄養学。著書に『92歳、栄養学者。ただの長生きではありません!』(女子栄養大学出版部)など多数。