転機になったのはケアマネのひと言
そんな状況の転機となったのは、両親を担当するケアマネジャーのひと言だった。
「あるとき、ケアマネジャーさんに、『やすこさん、今、したいことはありますか』と聞かれたんです。当時ちょうど娘が大学卒業前で、『娘が私と海外旅行に行きたいと言うのだけれど、そんなの無理ですよねえ』と言ったら、『ぜひ、行ってきてください!』と言われたんです」
以来、やすこさんは、介護保険制度を利用して、両親に高齢者施設に宿泊できるショートステイに行ってもらうように。趣味のゴルフや友人との食事を、ゆっくり楽しむ時間をつくれるようになった。
「ケアマネジャーさんのすすめには、『えー! ええんですか?』という驚きしかありませんでした。ケアマネさんというのは、要介護の親の面倒をみてくれるだけでなく、介護をする側のことも、ケアしてくれるんですね」
それまでは日帰りのサービスを利用していたが、やはり数日間介護から離れられるのは何よりの気分転換になり、心に余裕ができた。父親に「ゴルフに行ってきたよ」と言うと、「よかったな」と返ってきた。そんな家族同士で思いやる心は、やすこさんの子どもたちにも受け継がれているようだ。
「子どもたちはずっと、両親によく面倒をみてもらっていました。そして息子も娘も、おじいちゃん、おばあちゃんに、めちゃめちゃ優しかった。私としては、両親の介護で子どもたちに負担をかけさせまいと思っていましたが、ふたりはよく両親の部屋に行って話し相手になってくれました。ウクレレを弾いて聞かせたりね。私にはそんな気持ちの余裕がなかったので、すごくありがたかった」