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 神奈川県川崎市の介護付き有料老人ホーム『Sアミーユ川崎幸町』で、昨年末から今年にかけて、入居者の転落死亡事件や職員による虐待が相次いで発覚した。

 しかしホーム内の虐待事件にとどまらない。その他、全国の老人ホームで、不明朗な契約により、入居者が経済的に多大な損失を受けるケースが急増しているという。

 特養ホームに入りたくても、待機者数が多いのに加え、今年4月から原則として要介護3以上でないと入れなくなった。「施設になかなか頼れない」という焦りがあると、介護サービスと家賃をセットで提示するパッケージ商法に誘われるスキを作り、事業者側のお手盛りを許しやすくなる。  では、正式に“介護付き”を謳うホームは安心なのか。

 前出の『オフィス・ハスカップ』では、他の福祉団体との共同主催により定期的に電話相談を開設。そこに寄せられる声の中には、特定施設の指定を受けている有料ホームなどに親族が入居している人からの相談もあるという。

「例えば、介護付き有料ホームの場合でも“どのようなケアを行うか”というケアプランは入居者に提示しなければなりません。しかし、プランを“見たこともない”という人もいる。

 また、今年8月から一定以上所得者の介護サービス費の負担が2倍になり経済的に苦しい中でもホーム独自のさまざまな費用負担を相談なく次々上乗せされ、もう払えないという切実な訴えも寄せられています」

 ここでも“行き場がない人の弱み”を逆手にとった“ホーム側の冷たい対応”という構図が垣間見える。

 国民生活センターに寄せられる相談の中にも、刑事事件に発展しかねない、とんでもない事例が見られる。

「夫に先立たれ、介護付き有料老人ホームに入所したが、子どもとも疎遠になっているため、職員からホームを相続人とした公正証書の遺言書を書くように迫られました」(70代・女性)

 少なくとも、有料ホームであれば老人福祉法にのっとった行政への届け出が必要。介護保険サービスを提供するのであれば、行政による事業者指定が条件となる。となれば、管轄行政による監査が不正防止の盾となるはず。

「行政側も人手不足だったり、毎年の異動でその分野に詳しくない職員が担当せざるをえないケースがあります。また、介護保険などの制度が大きく変わったことで、地方行政が担う事務も増えています。そうした中で監査する力が脆弱化している傾向があります」(市民福祉情報オフィス・ハスカップ代表・小竹雅子さん)

取材・文/田中元(介護福祉ジャーナリスト)