2012年、日本中が固唾をのんで見守った、天皇陛下の心臓冠動脈バイパス手術を執刀した順天堂大学医学部の心臓血管外科教授・天野篤医師。
あれから2年が経過。現在でも多いときは1日に4件の外科手術を行い、これまでの手術の数は6500例を超え、その成功率は98%。
「現在は、2年前に陛下に行ったものより質の高い手術をすることができると思います。2年前より医学は進歩していますし、私の技術もあがっているはずです」
“神の手”を持つとも言われ、フジテレビ系列で放送されたドラマ『医龍4』の医療監修も務めた。そんな多忙な日々を過ごすなか、陛下の手術以降は4冊目となる著書『熱く生きる』(セブン&アイ出版)を上梓することになった。
今回の著書を出すきっかけをこう話す。
「もともと社会奉仕という意味で僻地や遠隔地の医療に関心があるのですが、なかなか時間をとることはできません。
そこで、印税の寄付という形で地域に奉仕できればと思っているときに、今回の本の話がきました。初版分は、伊豆大島の復興のために寄付することにしました」
昨年10月、台風26号で40人近い死者を出した東京の伊豆大島を天野さんは何度か訪問したことがあり、高校生のときには九死に一生を得る経験をした場所でもあるという。
陛下に対してはその後、「おおむね、おすこやか」との結果が発表されたが、実際のご体調はどうなのだろうか?
「全然知りません。陛下の現在の情報は私には入ってきませんし、手術のこともほとんど忘れてしまいました」
少々意外な答えを飄々とした様子で話す天野さんだが、こういう確信があるからだ。
「陛下の心臓や私のことが話題にならないということは、手術に問題がなかったということです。それが、私にとっては“勲章”です。
そこに心臓のバイパス手術のよさがあります。術後は、手術したことを忘れるほど元気になりますし、長期的に薬に頼ることも少ないはずです」